第30話【お金、どっかに舞い飛んでないかなぁ…‥】
お金が欲しい。
本当にお金が欲しい。
金銭に乾いた僕は、ひたすらそんな欲望を頭の中で繰り返し呟いていた。
実は先日、武器、防具を買いに、北区の屯田にある超大型ホームセンターに行ったんだけどさ、そこのダンジョンウォーカー用のブースで、装備を一覧していたんだよね。
前から結構なお値段するのは知っていたけど、本当に装備品って、上を見たらキリがないよね。
欲しい装備っていうか、目標にしている装備はあるんだけど、今の時点でこの広さで展示される装備の数々を見ると、どれもこれも欲しくなってくるから、僕の欲望というか願望って少なくとも、このブースいっぱいに広がってると思う。
河岸製作所で作っている、和製のロングソード、18万円だって、社長の河岸直人さん監修って書いてる、有名なバスタードソード、河岸直人の剣、俗称『カシナートの剣』、前衛で闘うダンジョンウォーカーもこの剣を持ったら一人前って言われている剣を造った人だからその性能はお墨付きってやつだね。
いつかは手に入れたいものだなあって、ショーケースの中の剣を見つめて思っちゃったよ。
ちなみに、カシナートの値段も書いてあった。完全予約生産だって。
価格にして72万円だって、手が出ないわ。
中型自動二輪のバイクとか買えちゃう価格だよね、でもあの輝きを見たら、やっぱりいつかというかできるだけ早く欲しいなあ。
厨二気質の少ない僕だけど、さすがにあのバッソ(バスタードソードの略です)を目の当たりにしてしまうと、装備した自分とか想像してしまって、ダメだ、ニヤニヤが止まらない。
まあ、浅階層な今の僕には猫に小判だけどさ、やっぱり憧れちゃうよね。
って、そんな地に足のつかない身の程知らない願望とかじゃなくて、現実問題として、今の僕にとっても、やっぱり足を引っ張る問題として、お金が足りないことなんだよ。
一応はさ、ライオットシールドと、ビニル製のロングソードを買おうとあれこれと悩んでいつと、シールドの方は2万円くらいなんで、その程度の予算を見ていたからいいけどさ、まあ、このくらいの物を持てば、浅階層はともかく中階層くらいなら行けそう。そのくらいの防御力はある盾なんだ。
ライオットシールドってね、あの機動隊員とかが持っている透明なポリカーボネート製の盾。刃物による斬撃や打撃なんかは完全に防げるよ。それをダンジョンで使用しやすい様に小ぶりにして、それらしい形になっている盾、いくつか種類があって、カイトシールドタイプは高価なので、僕は腕にも取り付けられる大きさの物にした。バックラータイプよりはかなり大きめだから、それなりの防御力も期待できそう。やっぱり防御力って大事だよね。
特に、刃物を持てない今の僕としては、このくらいの防御を添付しておかないと、安心できない。浅階層とはいえ、たとえ強い敵がいないとは言えビクビクしてしまうんだよね。
問題は剣なんだけどさ、妥協すれば、2千円くらいからあるんだけど、いいなあって思うものは5千円代なんだよね。安い奴って棒に近いけど、高くなると、剣にその形状が似てくるから、カッコいいんだよ。
ちなみに攻撃力はさほど変わらないと思える。
この、一本一本がきちんと包装されている5千円台の『ダンジョン用安全ロングソード』とポップが貼られている武器と、傘立てに入れられているような展示をされている、『初心者にはピッタリ』とか、『お買い得』ってポップが貼られている木の棒とでは、見た目に違いはあるものの、武器としての能力はさほど変わらないと思う。
両方とも、『刃物』ではなくて、形が変わっているけど、ぶっちゃけ『棒』の類だ。
じゃあ、何が違うかって、そりゃあ見た目だよ。
一方は完全に剣の見た目に、もう一方は普通の棒っ切れ。
この違いは大きいと思うよ。ダンジョンウォーカーとしてさ。大事だよ見た目。
でも、そうなると、微妙に僕の現在持っているお金では足りないんだ。
小学生のお年玉から、爪に火を灯すように貯め続けたお金じゃ、足りないんだ。本当に腹たつくらいギリギリ足りない。
しばらくの間、売り場をうろうろしている僕だったけど、少なくとも盾は必要だし、防具は浅階層でもそこそこ良い物は買おうと決めていたしね。
何が欲しいかって、地位も名誉もまして女でもなく、ブクマ、感想等よろしくお願いします!