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第89話【埋め尽くさんほどのゴブリンの群れ】

 本当にすごい数。


 土日祝のススキノスクランブル交差点の方が空の高さがあるだけマシって感じ。


 これだけの数のゴブリンをまとめていける理由とかないと、ちょっとありえない数だよ。何か圧倒的な、それこそエルダー的なそんなカリスマでもないとこの数の群れは引き入れないはずだ。


 なんて考えていると、春夏さんが叫ぶ。


 「秋くん、あの子危ない!」


 室内中央、ゴブリンに囲まれているクロスクロスの人、今にも命が吹き消されそうだ。


 こういう光景って、あまり気持ちの良いものではないよね、一応の社会性っていうか、ゴブリン絡みつくと微笑ましい光景かもだけどね。


 猫なんかの話。


 よく親猫がさ、子猫狩りを教えるために、自分で狩ってきたネズミなんかを弱らせて、子猫の前に持ってきて、遊ばせるように学習させるじゃない。まさにその光景が僕らの見た室内の姿だった。


 もうボロボロのクロスクロスの人の周りに、小さな白い帽子のゴブリンが尖った木の槍で突いている。


 その度にクロスクロスの人の悲鳴が上がって、パニクって剣を振り回して攻撃を仕掛ける、いやあれは攻撃じゃあないな、本当に無我夢中な感じだよ。すると、小さい白い帽子ゴブリンは体格的には子供くらいしかなくて、一回は逃げるから、クロスクロスの人はその場から逃げようと、ゴブリンたちが開けた場所に進もうとするんだけど赤い帽子のゴブリン、レッドキャップがその場に現れて、弱ったクロスクロスの人は簡単に吹き飛ばされて、元の位置に戻される。


 あまりにボロボロで、最初は気がつかなかったけど、その悲鳴と立ち振る舞いから女の子ってわかった。


 確かに小物だね、ゴブリンだものね。でも、あれ、赤い帽子。つまりレッドキャップが5匹混ざってるよ。


 「これは厳しい」


 と石山さんは言う。


 ほんと、レッドキャップって、前、結構苦労した覚えがあるよ。本来は深階層にしか出ないゴブリンの上級種。巨大な戦釜を持って襲いかかってくる奴、一匹でもさっきのミノさんよりもよほど手強いよ。


 そんな状況なんだけど、最悪な事に、僕たちが入ってきたことによって、確かにこのゴブリンの教育所みたいになっていた室内の雰囲気が変わった。


 それは、僕みたいな鈍い人間でもわかるよ、新しいおもちゃが入ってきたんだ、もう古いおもちゃはいらないよね、ってきっとここに集まるゴブリンはそう思っていたんだよ。


 当然、室内の中心のクロスクロスの女の子の首にレッドキャップの大きな釜が走る。


 ああ、もう!


 ノープランでその渦中に飛び込む僕がいた。


 女の子の首に迫る釜を弾いて、大量の仲間に安心していたレッドキャップの首を跳ね飛ばす。隙があって良かった、一匹倒した。ラッキー。


 「開けて!」


 と叫ぶ。春夏さんは瞬時に退路を作る。周りにいた弱々しい白帽子のゴブリンを手当たり次第に蹴散らして、僕のいる中心から扉に向かっての退路を確保してくれる。

 おお、助かる。


 「逃げて!」


 と背に入れてかばった女の子に言うと、最悪だ、女の子、安心して僕の顔見た後気絶してしまった。倒れちゃったよ。


 他のレッドキャップが春夏さんに襲いかかってゆく。2匹が同時にかかって行ってる。これでさすがの春夏さんもレッドキャップ2匹は辛い、防戦となる。これで攻撃手の1人が完全に潰された。


 今、後ろから襲われたら僕と言うか気絶した彼女が危険だ。って言うかここ全方向にゴブリンがいるんだよね、緑とかオレンジとかのどれだけのクラスかわからないけど確実に白よりは強いゴブリンにも囲まれている。


 すると、後ろの方で、おそらく僕に襲いかかろうとしていたゴブリンが多数吹き飛んでいた。何が起こった?


 「熱い、熱いぞ、真壁 秋殿、持って危険を顧みず、弱きものを助ける姿勢、感動した」 


 と、ちぎっては投げちぎっては投げをしてくれる石山さんだ。もう、僕の本名を知ってる事を隠そうともしない姿勢だよ。助かるけど、このまま僕と石山さんで各個撃破していってもレッドキャップが混ざったこの団体ゴブリンを相手だとジリ貧は間違いない。しまったなあ、全体的に攻撃できる角田さんがいてくれた方が良かった。数を言えよ、クロスクロスの隊長さんたち。戦闘力もだけど情報伝達能力も低いみたいだ。


 ちょっとでも、彼女を連れて出口方面に動けないだろうか? 封じられて考えあぐねている僕に、


 「兄! 春夏、ゴリラ かき回す、そこから動くな!」


 僕と春夏さんはともかく、ゴリラって、多分、石山さんの事なんだろうなあ、ちらっとみた石山さんはそれほど悪い気はしていないみたいだけど、妹は一体何をするつもりなのだろう。

 

 


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