第87話【全方位型殲滅系突撃パーティー】
最近僕は薫子さんとか葉山さんから聞かされた。くれぐれも自分たちを普通だと思わないようにと釘を刺された。
事実上の相手による不意打ちが成立しない典型的アタッカーな僕に、滅殺サムライの春夏さん、全魔法による全レンジ攻撃の角田さん。
未だに自覚はないけど、僕らのことは『全方位型殲滅系突撃パーティー』とか言われているらしい。
僕らの存在を正しく知る人たちからはそんな評価みたい。
しかも、このメンバーは集めていた方が安全だって言われてるんだって、お互いがブレーキの役割を果たしているので、バラしてしまうと歯止めが効かなくなるんだって。まあ、あの時の多月さんたちのこともあるから僕には心当たりはありありなんだけどさ、ちょっとひどいよね。
だから、薫子さんが言うには『妹』みたいに完全に庇護対象が入ることによって良い形に落ち着くのでは、って言っていた。つまり、前みたいに無茶しないで安全を心がけるいいパーティーになるんじゃないかって言ってた。確かにね、妹だからね、守らないと。
そんな事を考えていたら、妹がテケテケと近づいてくるから思わず見ちゃった。
「どうした、兄?」
「いや、別になんでもないよ」
すると妹は、僕の方を見て、倒したミノさんを見て、また僕を見て、
「やっぱり兄は早強いなあ、あんまりあの速度で動ける奴っていないぞ」
普通に感心されてしまう。そして、足元から「秋様、ファイトです」って小声が聞こえてきた。ありがとう桃井くん、次も頑張るよ。
そして興奮冷め止まぬ脇本さんは、なんか春夏さんを口説き始めてる。違う意味で。
「どうですか、あなたほどの実力のある方なら、クロスクロスは高待遇を保証します、是非一度本部に来てください」
と、春夏さんの手を強く握って、強く強く言う。もう逃がさないわ、みたいなそんな言い方だよ。
「いえ、あの」
と若干嫌がっているというか引き気味の春夏さんだ。困った挙句、その表情で僕に助けを求める始末だ。
「あ、すいません、ごめんなさい、私ったらつい」
そう言って手を離して謝る。
確かに、この戦力なら春夏さんみたいな人見たら欲しがるのはわかる気がする。っていうか普通、僕らの仲間に戦闘特化の中でも超のつくほどの上級職というかエリートクラスの侍がいるってのも確かに恵まれた話だもの。そりゃあスカウトもされるよね。
「今の斬撃、あれはスキルなのか? まさかとは思うけど『サムライ』とか? いや、まさか」
と神嶋さんはそう言った。そうだよね、数は少ないから、超希少だからね。サムライってクラス。こんな所にいるって考える方が不自然だよね、わかるよ僕も未だにそう思うもの。
「彼女と合わせて戦える、君もなかなか良いよ、戦力的には至らないけど、そこはこれからの伸びしろだと思えば、クロスクロスにはいればきっと強くなれるよ」
と言ってもらった。いやいやどうも、と素直に感謝な僕だった。
「なるほど、今の戦いから、彼の戦力をそう分析するのか」
と石山さんも話に参加して来た。
「ええ、流石にギルドに認められた人たちだ、彼はバランスと最後が悪くなってますが、良いですね、もちろん、あの唐竹割りには驚かされました、あの大きさの敵を一撃でなんて初めて見ましたよ」
興奮気味にそう話す神嶋さんに、石山さんは冷静な面持ちで言うんだよ。
「なるほど、なるほど、確かにあの唐竹割りは見事だった、ふむふむ、神嶋隊長さんは見る目がありますな、これはクロスクロスの組織の戦力の高さも伺えると言うもの」
と意味ありげなことを言った。良いから、そういうことは言わないでおこうよ。