第83話【札幌市南区の仲間達】
僕に変わって角田さんが色々聞いて分析していたけど、置いてきた戦力の規模ではせいぜい1体のエルダー級に対峙するのがやっとで、4体だと押されてクロスクロスのみなさんの方が全滅の恐れがあるらしい。
「言っちゃあなんですけど、俺たちの邪魔にならないようにしてほしいですね」
って耳打ちされた。
とか言う角田さんて、ひどいよね。こんなにみんなのこと心配して、一生懸命なのにさ、さっき雑魚認定されたのが面白くないみたいだ。桃井くんはさっきから姿が見えないからきっと僕の影の中だね。春夏さんは突っ込むことも無く「各個撃破にする? それとも一緒に行く?」ってこれからエルダー級モンスター相手にしようってのに、ピクニックでも行くみたいにウキウキと聞いてきてる、まあその辺は着いてからの状況を見てだね。
それにしても、うちのメンツっていつも通りだよね。クロスクロスの皆さんは緊張の面持ちなのにね。石山さんも、黙って瞑想しているみたい。集中しているのかな? って耳を澄ましたらイビキとか聞こえてくるし、寝てんのかよ。
「んが!」とか言って唐突に起きた。
そんな僕らに神嶋さんは言う。
「これは、推測の域を出ない話なのだが、今回の事件には首謀者がいるようなのだ」
誰かが故意にこの事件を起こしているってことかな。確かにあの金色宝箱の存在はそういう風に見ている人も多い。ツギさんも言ってた、あのトラップは人の手によるものだって。
そして神嶋さんに続けて脇本さんも言った。
「以前にも似たような事件はあったのよ、浅階層にエルダーモンスターを呼び出して、ダンジョンの理性であるギルドを半壊させダンジョン内の最大戦力『黒の猟団』を解体寸前まで追い詰めた奴」
ん?
「聞いたことないかしら?、『浅階層の悪鬼』て?」
んん??
「首謀者の名前は真壁 秋、この北海道ダンジョンを恐怖と混乱の渦中に落とそうとしている人物だ」
んんん???
そして、神嶋さんは言った。
「ともかく、それらしい人物にであったら逃げてほしい、戦闘力もスキルもすでに人外の領域らしい、個人では対峙することすら不可能なんだ、気をつけてくれ」
と、そこまで言って、神嶋さんは気がついたように僕に訪ねてきた。
「そういえば、まだ名前を聞いていなかったね、よかったら教えてくれないか?」
えーと、んーと、あ、そうだ。
「定山 渓と言います、こっちの茶髪が金山で、こっちの女の子が簾舞さんです、みんな南区なんですよ」
ちゃんと金山さんも簾舞さんもお辞儀して合わせてくれた。ちなみに藤野くんは今は僕の影の中です。
みんな石山通り沿いだね。
「そうか、じゃあ石山さん、そして南区のみんな、よろしく頼むよ、くれぐれも危なくなったら逃げてほしい」
と神嶋さんは言って、脇本さんもそれに同調するように頷いていた。
ああ、よかった、この人たち地元じゃなくて、なんか石山さんはグッグッグって笑ってるけど、なんかメンドくさい事になりそうな感じかなあ。
ほんと、これ以上自体をかき回すことがないように、定山 渓としてやり過ごそう。
思わず初対面のクロスクロスに乗っちゃったけど、妹の事がちょっとでも解決するなら
このくらいの苦労はね。
ほら、金山さんも腑に落ちないって顔してないで、もうすぐ着くから、さっさと行くよ。
「渓くん、各個撃破にする? それとも一緒に行く? 一緒がいいよね」
って簾舞さんはニコニコしていた。ブレないなあ、簾舞さんは。
感心する僕の体はエレベーターの到着の小さな衝撃にちょっと崩れそうになってしまった。
よし、行くぞ。