第29話【新たな王の誕生】
そっか、神様に指名されることでなれる『王様』ってクラスがあるのかあ。
特に、賢能と兇暴のゼクトって神様は、指定する『王様』をギルドに置いているって話なんだって。つまり「ギルドの神様ってこと?」って質問を角田さんに返すと、「違います」って速攻で否定してたから、その辺は複雑らしい。
それにしてもやっぱり物知りだね、角田さん、そのダンジョンへのベテランな感じが半端ないよ。頼りになるよ。
で、どうも神殺しにあった被害者ってのはゼクト様らしい。
で、そんな情報を教えてくれた角田さんは、ジッと僕の顔を見て、
「覚えてないですか?」
とか聞いてくるから、
「いや、知らないし」
って言ったら、「そうですか」って言ってた。
うん、聞いたこともない。
神様殺したら大変なことになりそうな気がするけど、それは角田さん曰く、三柱神って、ダンジョン内ではモンスター扱いしてもいいらしくて、倒してしまってもいいのだそうだ。
なんか罰当たりな感じがするけど、そうなんだ。って思った。
もちろん、ギルドからの公式情報ではないから、あくまで噂レベルです、って角田さんは言ってたけどね。
でも、まあ、そんな寓話や噂、神様だって実在する世界が、北海道ダンジョンでもあるんだよなあ。
ただ、それでも、現実問題として『銀色の貴腐人』が討伐されたのは事実で、それは正式のものとしてしギルドから発表されるだろうって言われてる。
まあ、僕としてはそんな雲の上の話はいいや、って思って、僕としては切実なのは、あれから、ダンジョンの帰りにセイコマート寄って、買い食いするのが習慣になってしまって、貯金までは手をつけてないけど、今月のお小遣いに結構減ってる。
近いうち、ホーマックに、装備品買いに行こうかって思ってたんだけど、これじゃあダメだ、って言い聞かすけど、それでも、美味しいんだよなあ、ダンジョン帰りのアイスとかセイコマートスイーツ。
いや、だって、帰り道に狙いすましたかの様に、あの何もかもが美味しそうなオレンジ色の看板があるからさ。最近、これもダンジョントラップの一種か? なんて考えてる僕だよ。家に帰ってすぐにご飯食べられるのに、フレッシュ卵サンドとか買ってしまうのは、本当に計算されつくされたトラップとしか思えない。
今日は買い食いしないぞ、って誓っていた気持ちも、時間が経過して今の時間になると、今日は何を食べようかな? になるんだから不思議だよね。
少し、お腹も空いて来たなあ、って思ってると、春夏さんが、
「秋くん、お腹すいたの?」
って聞いて来るから、そこは恥ずかしげもなく、うん。って答える。
すると春夏さん、小さな包みを開け始めた。
そういえば、春夏さん、なんか荷物もってるなあ、って思ってはいたんだよね。
で、その紙袋から、カップケーキを出して、僕に差し出す。
「え? これ、春夏さんの手作り??」
って聞いたら、恥ずかしそうにうなづいていた。
うわ、マジ? なんかすごいうれしい。
「味の方は保証できないよ」
って言う春夏さんだけどさ、もう、なんだっていいよ、春夏さんの手作りなら、玄武岩だって食べられるよ。
かなりテンションが上がる僕はそれを一つもらってさっそく一口食べる。
うっま~い!!!!
いや、だって、これ、僕の為に作ってくれたなんて考えると余計に尊い気持ちになってくる。
角田さんも一緒に、春夏さんもみんなで食べてた。
そしたらさ、角田さんが思い出したみたいにいうんだよね。
「あと、秋さん、これは俺独自の情報なんですが…」
って前振りをしてから、
「どうも、『王様』が一人増えたみたいですよ」
って言ってた。
へー、って思って、僕は口の中に広がる幸せな味を飲み込んでから、
「じゃあ、神様も増えたって事?」
って聞いたら、
「それはどうですかね?」
って、どうしてか春夏さんに聞いていたよ。
で、春夏さんに急に話を振るもんだから、春夏さん、せき込んでしまったじゃないか。
心配する僕に、角田さんは、
「秋さん、もしかして他人事だって思ってます?」
なんて聞いて来るから、
「他人事でしょ?」
って言ったら、
「そうですか」
って、どこか楽しそうに笑ってるんだよ角田さん。
ダンジョンの弩級の実力者とかさ、まだ会う予定もないであろう、神様や王様の事よりも、今後、もうちょっと装備とかも考えていかないとなあ、って、今は現実というなの足元を見ている僕だったよ。
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