第81話【謎の男 石山通(国道230号)】
体もでかいけど顔もでかかった。巨大だよ、クマみたい。短めの髪、スポーツ刈りよりもまだ短い髪に味付け海苔みたいな太い眉毛、笑ってしまうくらい細い目はまるで線みたい、以外に唇は細く、結んだ口はでかい、そして顎は見事に割れている。
そして、そのごつい手をポンと叩いて、
「そうだ、私の名前は『石山』だ、うむ、苗字は石山だ、名は『通』でどうだろう?」
いや、どうだろう? って聞かれても、それ今思いついたでしょ? 石山通だよね?国道230号線だよね? ここ大通公園も10丁目あたりで交差してるよね。
「そうですか、私は脇本です、よろしくお願いします石山さん」
「俺は、神嶋です、よろしく石山さん」
ええ! 納得しちゃったよ、ってかこの人達地元の人じゃないのかな?
なんか石山さんもなんかドヤ顔で僕を見てるし、なんだ?これ?
って言うか、さっきから思うんだけど、この大きな人、僕の事を知っているっぽい感じがして仕方ない。僕はこの石山さんを知らないから、石山さん方一方的に。
なんか、これって、ツギさんと同じパターンな感じがして、先ほどの契約紙だっけ、あに書かれていた名前が気になった。それと、これ真希さん案件って事?
でも、今回は頼まれた訳でも、人を紹介してもらう訳でもないから、遠慮させてもらうね。だって、中階層にエルダーに、ギルド関連者に、得体の知れない石山通りと名乗る、どう見ても只者じゃない人だよ、もう嫌な予感しかしないよ。
じゃあ、僕らは最初の予定通りに帰ろうとしてたんだけど、その時僕の耳に入ってしまったんだ。
「金色の宝箱が目撃されてから、地下20階にエルダーが溢れ出しました。正直、今の我々の戦力では心もとないとは思っていたのですが、中階層へ向かうもの達に協力は仰げませんから」
金色の宝箱だと?
僕は、その言葉を聞いた瞬間に妹を見た。
予想通り妹は固まっていた。そうだ、この子は、妹はそこに居たんだ。自分自身が誰かも解らない、名前もつけることができないこの妹の手掛かりが、多分、謎の根幹がまた地下20階に出現したんだ。
「僕も行く!」
思考も介在しないで、僕は言った。
その後に、
「いいよね、予定変更、僕もそこに行きたい」
と角田さんと春夏さん、そして桃井くん、妹に告げた。
「兄」
と不安げに固まって居た妹の表情はパッと明るくなる。
「是非も無しですね」
とみんな僕の決定に賛成してくれる。
しかし、クロスクロスの2名、口を開いたのは、脇本さんの方、
「危険だ、君、中学一年生くらいでしょ、危ないから」
と好い顔をしない。神嶋さんの方は、僕らの装備を見て、
「ジャージじゃなあ……、中階層でも危ないだろ、剣も細いし、今、退治しないといけないのは、深階層クラスのモンスターなんだ、気持ちはありがたいけど」
なんてな事を言う。
いいよ、別に誰に断って行くつもりもないから、僕が行くって言ったら行くから。
ひとまずエレベーターの入り口のテープをかいくぐろうとした時、またあのゴツい手が僕を掴んだ。
振り切ろうとすると、自称石山通さんは言うんだ。
「大丈夫だ、このもの達は、段階を経る上での中階層にいる者達で、その実力は、あの『聖剣士・麻生』も認めるほどの実力者だ、私が保障しよう」
え? 麻生って、あの麻生さん?