第80話【新生組織『クロスクロス』】
そんな白いプレートメイルの2人の姿をここで待たされていたほかのダンジョンウォーカーの人達はポカンと見ていたんだけど、そのうち誰かが「せめて何かあったかくらいは教えろ」みたいな事を言い出す人が出た。そうだよね、僕も知りたい。
「説明は、私からします」
と後から出て来た女の人が言った。
「私はクロスクロス3番隊、隊長の脇本 煜です、そして、こちらが2番隊の隊長の神嶋 紘樹です」
と男の人の方も紹介した。
「私たちはギルドから依頼された案件でこのエレベーターの行き着くさきで、問題が発生している。現在、我々は1番隊長をと自分たちの小隊で問題の解決に紛糾中です」
「今、中階層にエルダー級のモンスターが発生しています、解決するまで、ここを利用することはギルドの名に置いて禁止します」
と追加で神嶋さんが言った。
ここにいたダンジョンウォーカーの人達のほとんどはエルダーの名を聞いて撤退を選んだようだった。当たり前だよね。中階層の常連なら帰るよ、普通。
そうか、じゃあ僕も帰ろうかな、ってなるよね。
ってか、今日はもういいや、この前の時はほら、ギルドが留守だったし、シリカさんもいたしさ、でも今回は、クロスクロスだっけ、そう言う如何にも強そうな人がいるからいいやって思ったんだよ。
「今日はもういいよね」
ってそこ儚くみんなに言ったら、うなずいていたから、じゃあ帰るか、ってなったんだけど、引き返して進もうとしたら、なんかにぶつかった。
壁か?って思った。硬く厚く大きい何か。
「すまない、その話、私も興味がある」
とその壁は言った。どうやら、いつのまにか僕の後ろには人がいて、その人物にぶつかったらしい。
「あ、ごめんなさい」
と、さらによく謝る日だなあ、って思ってその人物の顔を見上げようとするも、その前にある隆々とした分厚い胸板に阻まれ、その顔がよく見えない。
僕をすっぽりと抱え込んでしまっているその体はもう岩に等しい。
さっきの五頭さんとか、今、ここでエレベーターを封鎖しているクロスクロスの神嶋さんだっけ、この人を大きいて形容するなら、この未だ近すぎて全容の見えない壁な人は、一言で巨漢って感じ、僕の両肩を掴む手なんて僕の顔くらいは軽くある。ほんと、人? って感じだ。
そして、僕のことなんてまるで関係ないみたいに、岩な人とクロスクロス、だっけ? その人たちとの会話が開始される。
「あなたは?」
と神嶋さんが言うと、
「ギルドの関係者だ」
「証明するものは?」
と、今度は脇本さんが訪ねてくると、岩な人は僕の肩を持つ右手を離して、ポケットから何かの紙片を取り出した。片手になったので、するっとこの場を抜け出そうとするも、万力みたいな力で抑えられて身動き1つ取れやしない、僕を逃す気なんてさらさらないみたいな感じ。で、序でにそのてに持った紙片が目に入ったんだけど、そこにはメモ紙みたいな紙に『この者ギルドの命により事件調査中…工藤 真希』と書かれてあった。
いや、そんなものを見せても、自分でも書けるでしょ? こんな走り書き。なんて思ったら、
「なるほど、確かに」
って脇本さん納得してしまったよ。
「ギルドの発行する『契約紙』です、ここには嘘は書けません」
といつの間にか直ぐ側に来ていた角田さんが教えてくれた。そうなんだ。ってか助けてよ、この人離してくれないんだよ。
すると、なんか春夏さんがその人のごつい手を掴んで離そうとしてくれる。
「ああ、すまない、うっかりだ」
と僕、ここで漸く解放される。
「悪かったなあ、私は…」
ここまで言って、何か悩む。その顔を僕は漸く見ることが出来た。
もう、一言で言うなら、その顔も体も、僕を掴む指さえも、デカイって、大きくて厚くて、直近で見る羊蹄山の様に雄大な人だったよ。