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第74話【真壁秋、妹を拾い持ち帰る】


 それにしても、真希さんてこんなに優しく子供の相手とかできる人なんだなあ、全く違和感がないよ、今度、僕に接する時も是非この感じでお願いしたいものだよ。


 真希さんと女の子の話は続いていた。


 「無くしたのよ、だから取り返してたの」


 「もしかして、一回死んだのかな?」


 「えーっとね、死んでないと思うけど、殺したんだって意識はつけられたかも、一度は全部無くしかかったかもしれないわ」


 「そっか、大変だったね、怖くなかった? それに痛くなかった?」


 「大丈夫、それは自覚できたから、『怖い』ってまだ知らないし『痛み』は悪い事じゃないでしょ?」


 「じゃあ、もう安定はしてるんだね」


 「うん、それは大丈夫よ、お腹すくし、寒し暑いも感じるしね」


 「なら、住むとことか考えないとね」


 「どこでもいいよ、ずっとダンジョンの中だったから」


 会話の内容も全く理解できない内容だった。多分今の彼女の生活にも触れてるんだと思う。でも彼女達は一体何を話しているのだろう?


 そんな様子を僕の隣の春夏さんはニコニコと見守っているような雰囲気だった。


 概ね、何かしらの決着がついたのだろうか?


 今、目の前に展開されている会話の内容は、僕にしては意味不明というか問題から不明な感じを受けてしまうけど、この少女の件については真希さんに任せるとして、概ね今回の事は解決したって思っていいのだろうか?


 「こっちは、秋だ」


 と会話の内容を漠然としか聞いてなかった僕に急に話を振られた、真希さんが僕の名前を多分彼女に説明していたんだと思う。びっくりするよね。急に関係のない会話だと思って気を抜いて適当に聞いていたら、そこに自分の名前が出てくると、本当に驚くよね。


 「で、そっちが春夏ちゃんだよ」


 と続いて、春夏さんの名前も教えていた。


 「ツギは知ってる、ずっと一緒だったからね」


 と少女は笑顔でそう言った。ああ、もうなんか完全に安心してる顔だね、よかったよ真希さんに任せて。本当に包容力があるなあ。さすがにギルドを纏めている人だよ。


 とても和気藹々な雰囲気に僕もつられて微笑んでしまう。


 そして、真希さんはいうんだよ。


 「じゃあ、名前も決めてもらうといいよ、頼んだよ、アッキー、今日からこの子をお前の妹にしてやりな」


 ん?


 「1人増えるのも、2人増えるのも変わらないべ、丁度よかったべさ、まさに渡に船。大丈夫っしょ、きっとうまく行くから、なアッキー」 


 いや、何? 何をどうしてそんな話になってるの?


 「アッキーがしでかした他の面倒臭い事はこっちがやってやるから、代わりにそのくらいいいべ」


 いやいやいや、犬とか猫を貰う訳じゃあないよ、人だよ、少女だよ。


 え? いつそんな話出たの?


 混乱する僕。


 おかしいよ、こんなの変だよ。


 「あ! 真希さん、あのさ!」


 言いたい事は山ほどあるし聞きたいことも海のごとく存在するけど、僕の口からはひとまずな単語しか出てこない。思考が詰まって言葉が継げない。


 「じゃ、解散だべ」


 僕の疑問も抵抗も笑顔の真希さんに一刀両断にブッツリと切られてしまう。


 真希さんの中ではすっかり解決したみたいになってる。もう、その表情のやりきった感が半端ない。


 え?


 ええー!


 いや、ほんと、ちょっと待って。


 鍵師さんを探しに言って、『妹』がおまけについてきましたみたいになって、ええ?


 ほんと、ええ? だよ。


 パニックになりながらも、あれ、今、真希さん変なことを言ったぞ、って思って、いやそもそもこの提案が変だろ、って感じで、その中でも1人増えるも、2人増える持って言葉に引っかかっている僕に、


 「じゃあ、よろしくお願いします」


 って少女は、深く丁寧にお辞儀してくれる。僕に向かって。


 おかしいよね、問題解決のためにダンジョンに入って、問題が増えたみたいになってる。 


 パニックになる僕に優しく微笑む春夏さん。真希さんはもうすっかり問題は無いねって感じでお茶飲んでるし、ツギさんに至ってはいつのまにかいなくなっていた。


 麻生さんと椎名さんは相変わらず。


 みんな普通だけど、なんか僕だけが釈然としない。


 どこかに何かを捨て去られた気がしていて、いたたまれ無い気分だった。


 でも、真希さん、さっき一人増えても二人増えても、って言ったな?


 え? 僕の知らない間に、僕の家、誰か増えた?


 だから、


 「別に、うちの家族は増えてないなあ」


 なんて呟いてしまう。


 そのタイミングで、この場に急に喜耒さんが帰ってきてさ、なんだろう、真希さんに

腰の辺りをパンって叩かれて、


 「ほれ!」


 とか言われてる。


 喜耒さんは、一生懸命に咳払いをしてるんだけど、どうしたんだろ?


 この後の衝撃の事実を知ることになるなんてまるで予想だにしない僕は、やたらと咳払いをし続ける喜耒さんに対して風邪でも引いたのかも、っていらない心配をしてしまったよ。


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