第69話【巨獣の名はキングベヒモス】
倒した巨獣を食べるっていうからびっくりした。
何も考えすに、心配してしまったよ。ここ調理器具とかないじゃん、だから生色になるじゃない、危ないよね、肉を生で食べるの、タレ付きジンギスカンとかたまに生で食べる強者もいるけどさ、これってガチで生だよね、きっと危ない、昨今、色々と問題視されてるし、いくら北海道が気温が低い上に新鮮な肉が多くても、生食は問題あるでしょ、O157とか、普段の牛肉でもそうなんだから、モンスターのお肉なんていくら倒しててのほやほやでもきっと危険だ、止めなきゃって思った。
あれこれ考える僕に、
「あ、そうか」
と、少女は僕の適当な言葉に何かを気付かされた様に、ハッとして納得した様に頷いてから僕にいう。
「食べるっていうのは、この大型のモンスターを情報としてあたしの中に組み込むって事で、本当にあたしムシャムシャしてから消化器官を使って取り込む訳じゃあないんだよ、さすがにそれはない」
本当に食べる訳じゃあないって事はわかった。
でも、その後の情報云々がわからない。
僕は多分、頭の周りを?だらけにして首を傾げていたんだと思う。
「もういいよ、勝手にもらうから」
と業を煮やした少女は、そんな僕を他所に、勝手にそのモンスターの死体の前に歩み出て、彼女の着込んでいる大きめの鈍色のローブから手を出して、モンスターの体、ツノの付け根というか頭のあたりに触れる。
「うん、沢山ある、これとても強い子だ」
と言って微笑んだ。まるで、予期せぬプレゼントをもらって、それが自分の想像もしえない、期待し続けた物を目にした子供の様な、多分そんな純粋な笑顔に、僕は見えた。
そして、「いただきます」と行儀良く言ってから、少女はそのモンスターの取り込みを開始した。
すると、その大きな牛というか体毛の生えた恐竜というか、モンスターは、彼女の触れている箇所から、まるで吸い取られるように、筋骨隆々とした重くた固そうな体が、溶けてというか解けて吸い込まれて行くんだよ。
そしてほんのわずかな時間でそのモンスターの遺体は無くなってしまったって訳さ。
「美味しかったよ、『キングベヒモス』、この前食べた『マンイーター』より美味しかった」
僕と真希さんの話に割り込んで、そんな言い方をしてポツリと少女は呟いた。
そのキングベヒモスって言葉が出た瞬間に、僕らはその場にいたそれぞれが仕事をしているであろうギルドの人たちの視線を浴びる。みんな一斉にこっち見た。それはまさに好
奇の視線、というか、まるで信じられない物を見る、そんな視線だった。
「2年前に、目撃したという記録はある」
と椎名さんと話していた麻生さんが、真希さんにそう告げた。
「やはり、キングでしたか、以前、猟団で狩った時よりも大型だったので、もしやとは思っていましたが…」
と椎名さんまで、割と興奮気味に呟く。
「間違いないだべか?」
「取り込んだ情報からだから、間違いようが無いよ、キングベヒモスだよ」
と女の子はさもありなんという感じで言う。
「にわかに信じかたいが…」
そう真希さんは呟いた。
そして、ざっと僕らを見渡してから、今はいない人物にまで思いを走らせて、「まあ、このメンツならヤレるといえばヤレるか」と言葉を繋げた。
なんだろう、まるで街を歩いていたらツチノコ見たくらいに言われる。いや違うな、もっと現実にあるけどそこにはいないでしょ、くらいの感覚、まるでかつて豊平川にイトウ、陸封型のサケ科の仲間で、この国において淡水魚としては最大と言われている魚、漢字で書くと魚へんに鬼で大型の物になると1,5m以上になる幻の魚で、釧路平原とか道東の方にいるって言われている。それが一時期、札幌の街のど真ん中を流れる豊平川にメータークラスが現れたって噂だたったことがあるんだよ、そんな噂が登った時くらいの信じられないと言った程度の顔をしている。