第68話【巨獣を食す童女】
出て来たと言うか、あの宝箱も、罠らしき仕組みが解除されて開けようとした瞬間に、まるで組み木が空間に解けるように、跡形もなくなくなってしまったんだよね。まあ札幌ダンジョンだからさ、何があったとしても不思議はないんだけどさ。あの様子をまともに目の当たりにしてしまっては、もう圧倒されたよ。
「それだけじゃ、特定は難しいなあ、なんか変わった攻撃方法とかなかったべか?」
と尋ねられたので、
「突進して来ました。物凄い迫力でした、体も大きかったし」
しかも、あのモンスター床を鳴らして、大きく地震みたいに揺らしてこっちの動きをとめて来るんだよ、多分、震度4か5くらいはあったと思う。でもまあ、地震大国に生まれた僕らにとってはその程度はなんてこともないけどね。でも最初は本当に地震かとも思った。
津波とか大丈夫かな、震源地が海の方だった場合、そんな事を心配するくらい室内は大揺れたった。なんどもやられて、ああ、モンスターの攻撃かってわかった程度だったんだ。
どうやって倒したのか聞かれたので、まず、葉山さんが弓を打ちまくって、その間隙を縫っって椎名さんが雷を落として、僕と春夏さんと喜耒さんが切りまくって倒した、って感じかな。
もう、普通にモンスターだったから遠慮なく。集団でボコった。
中階層のモンスターにしては割と手強かったなあ、多分、体の大きさや体力面を差し引いても、中階層初日で出会ったレッドキャップ(ゴブリンの最上位種)よりはよほど強かったと思う。
それでも負ける要素はなかったね、みんな強いしさ、みんなのおかげで倒せたんだよ、ほんとに良かった。宝箱も出たし、そこにいたツギさんが開けてくれたし、出て来たのは変なペンダントだったけど、後で角田さんに見てもらおう。
一応トドメが僕だったんで、みんながドウゾドウゾ、って言っていたのでありがたくもらっておいた。とってもワクワクしている。一体なんだろうね、このペンダント。
そんな事を考えていると、真希さんのスマホが鳴って、「ちょっとごめん」と通話を開始する。
「うん、そうか、わかった、引き続き周辺も調査してくれ、したっけ気をつけるべさ」
と電話を切ってから、
「お前たちの、その大型モンスターを倒した場所には確かに何かと戦った後はあったらしいけど、モンスターの遺体みたいな物、残骸は何もなかったって報告があったべ」
と真希さんは言う。
「アッキーたちが嘘をついているとは思えないべし、したっけ、モンスターの遺体の始末されるのには時間が早すぎるべ、まだ何かあるかい?」
うん、ある。
そこからが、未だ僕も信じられないような光景が待っていたんだよ。
その大きなモンスターを倒したらさ、今、真希さんの前に座ってオレンジジュースを飲んでいるこの小学生にしか見えない女の子が僕に言うんだ。
「お兄ちゃん、これ貰っていい?」
その時僕は何を言われているのかわからなかったから「え?」って聞き直してしまったんだよ。いや、言っている言葉としての意味はわかるよ、でもそれはあまりに荒唐無稽というか、女の子の言っっているというかしようとしている意味がわからなくて、聞き直してしまったってのが正解だよ。すると女の子はよく考えて、わかりやすく言い直してくれたんだ。
「食べていい?」
食べるって、モンスターを?
「きっとお兄ちゃんたちにわかるようにお願いしたら、こういう言い方になるのよ、いいでしょ、食べても?」
「お腹壊さない?」
その子の言葉を瞬時に返して出てしまった言葉。
心配が先に立つけど、なんか言い方が間抜けな気がした。