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第65話【童女拘束、これで身動きできまい】

 再びじっと見る。


 どんどんジッと見続ける。


 そして、何かを思い出したのか、ハッとする。


 僕も多分、同じタイミングで、彼女と同じ顔をしていたんだと思う。もっとも僕はずっとそんな顔をしていた。この人物が現れてからハッとしていた。 


 でも、言葉を出したのは喜耒さんだった。


 「どうしてここに小学生女児が?」


 その言葉に、瞬く間に反応する少女。売り言葉が早い者勝ちお客様1名限りみたいなし早い感じの反応だ。音速を凌駕する速度だったよ。


 「誰が小学生よ! 私は、こう見えて…」


 と中途半端に言い返してから、


 「お兄ちゃん、幾つ?」


 と訪ねて来る。答える必要は無いとは思うけど、


 「え? 15歳だけど」


 と思わず答えてしまう。


 すると、少女、


 「じゃあ、あたしは16歳」


 と言う。


 じゃあ、って何だよ? 僕の年齢を聞いてから自分の年齢を決めたみたいな言い方だよ。ってか、見えないでしょ、16歳は無理ってか無茶と言うか無謀だと思う、多分小学生って決めつけたのは。この少女、高い方でも小学校中学年くらいなんだよ。多分、高学年って言われも、ええ? って思っちゃうほど、若いんじゃないくて、幼い。


 それに少なくとも、ダンジョン的な服装をしていればまだ少しは見た目に大きく見えたかもしれないけど、この子、本当にその辺の小学校の通学路の途中にある割と大きめの公園で遊んでいる子供みたいなカッコしているから、余計そう見えてしまう。そして多分、彼女もそう見えたんだろう、「あ!」って短く叫んでから、慌てて鈍色のローブを着込んで、


 「お兄ちゃん達さ、悪いけど、ちょっとここの場所から『消えてくれないかな』、ゴメンね何度も」


 と笑った。


 あ、やっぱこの子、あの時の子だ。


 間違いない、僕らをイジェクトした女の子、ってか、この子が僕らをイジェクトしたんだ。


 うわ、やばい、またイジェクトされる。


 そう思った瞬間に、僕はその彼女、小学生の女児の後ろに回って瞬時に抱きかかえる。


 「わ、わわ、なになに!」


 目の前にいた人間が急に視界から消失して、自分を抱きかかえるものだから、そりゃあ驚くよね、でもこっちだったニノ鉄は踏まない、踏む訳には行かない。2度もギルドの女子更衣室に飛ばされてたまるか、それでなくても、『中学生男子としては、高校生のお姉さんの下着姿を不可抗力でガン見できてラッキーだべさ、ドキッとしたべさ、トキめいたべさ、アッキーも男の子だもんなあ、罪な女だべさ私も』なんてな事を真希さんはギルド周辺で風聴しているといる話らしい。(河岸雪華情報)


 これで2度目があればさらに何を言われるか、わかったもんじゃ無い。


 本当に、真希さんと来たら、良い加減にしろよな、真面目にあの時はありがとうございました、だよ。


 「こら、離せ! 私は年上だぞ! 敬えよ! こら離せ!」


 あ、ヤバい、導言も防がないと、あのイジェクトが魔法スキルだったとして、その発言を防いでおかないといけない。角田さんが言うには相手が1人で手がとどくなら直接手で口を塞ぐのって結構有効な魔法封じだって言ってた。基本的に、スキル発動者の導言が認められない場合は、『請負頭』もまた魔法スキルの発動はないんだってさ。


 僕は躊躇することなく彼女の口を塞いだ。


 「よし、これで安心だよ」


 とみんなに言うと、なんかものすごい気の毒な顔を一斉に向けられてしまう。え? なにその反応?


 「真壁秋、いくらなんでもそれはやりすぎでは、相手は小学生だ」


 「年上に見られって言うのはこのくらいの歳の子ならよくあることだよ」


 喜耒さんと葉山さんが揃って口を開おて何を言って来るかと思ったらそんな事を言って来る。


 そして、僕の手に塞がれた少女の口がもごもご言い続けて、時折、ハムハムして来る。くすぐったい。


 「違う、この子だよ、僕らをイジェクトしたのは!」


 と叫んだ。すると、再び、半開きの扉が今度は全開に開く。


 「なんだよ、リア充どもにガツンと言ってぐるんじゃながったのが?」


 とまさにヌボーッと、新たな人物が僕らの前に現れた。


 細い長身で、長い手足、体格に合わないマントを羽織って、その人物は、ザンギリに切りそろえられた髪の間から、妙に白目がちな大きな目を見開いて僕を見た。


 「ああ、アギじゃねえが、悪い、心配がげたが?」


 と人の良い笑顔でカ行を濁らせながらそう言った。


 その後ろには、あの時の長く金色に輝くあの宝箱が、扉から覗く部屋の中心に鎮座している。間違いなくあの時の宝箱だ。巨人が守っていた奴。


 そしてあの時、あの場所に記憶の片割れを忘れて来ていることも知らない僕は、その細くヒョロリとした男に対しての、『どっかで会ったことあったかな?」と言うお得意の思考の底に沈んで行く。


 細く伸びた、塔のような宝箱は、まるで僕のそんな行き止まった思考を嗤うかのようにその輝きを1つ増して見せていた。

 

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