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第53話【あっ!!!】

 ひとまず、この閉ざされた室内から外に出よう。


 まだエレベーターに近いところにいるし、安心だよね。って確かに僕は油断していたんだ。


 それで、椎名さんは言う。


 「気をつけてね、狂王様、彼女はどこにでも潜伏して、あなたを狙ってくる、ダンジョンにいる限り安心なんてできないわ」


 って、笑ってた。


 もうすっかり、殺される事を受け入れてしまっているかのような椎名さんだよ。


 「ほら、椎名さんも逃げよ、さすがにダンジョンの外までは追ってこないよ、すぐにここを出ようよ」


 扉を開きながら、僕は彼女の方を見てそう声を掛ける。諦めちゃダメだよ、すぐに逃げよ。その黒の人は、オールレンジの攻撃ができる、多分、広範囲をコンガリと焼いてくれる角田さんあたりに任せて、今日はとっとと逃げるよ。


 そう声をかけようと思った時に、葉山さんが叫ぶんだ。その声は悲鳴に近い。


 「真壁くん!!」


 多分、次の言葉は、前に何かいる! そう叫んでいたに違いない。


 気がついていた葉山さん、気がついていない僕。


 でも、彼女のそんな僕に向けた言葉も続きが出る前に、全ては終了していた。


 扉を開けた瞬間に、しかも完全にゆるい気持ちで椎名さんを振り返って見ていた僕に襲いかかる2本の黒刀は、1つは腕ごと、1つは手首ごと宙に舞っていた。


 一瞬の刹那だった。


 僕は僕の行動を、落ちて来る敵に対しての斬撃を、何より斬ったという感触を理解するのは全てが完了してしまった後のことだ。


 そして僕の目の前、と言うか息のかかりそうな恋人同士の距離に落ちてくるその斬り残された肢体。


 首のから目の真下までマスクに黒布に覆われた人の顔、その目が、僕を不思議そうな顔をして見て、落ちて行く自分の体を半分くらい切り裂く僕の剣を見て、僕も同時に発してしまった言葉は、互いに、


 「あ」


 の一粒の叫びにも言葉にもならない一音だけ、そして、その驚きに呻くような言葉が僕の口から出ていた事に自覚していた時には全ては終わっていた。


 3っつに切り分けられたその女の子の本体は、落ちてきて、頭を下に僕にもたれかか里ながらゆっくりと床に落ちた。


 顔から始まって、体を斜めに走る剣の軌跡は、辛うじて背骨や心臓などのもっとも重要な器官を切り裂いていないものの、完全に肺を割り、気動を裂いてしまってしまっている。顔の傷はなんとか避けたみたいで、うっすらとした傷が頬に斜めに走っていた。


 薄く開いた目に力が無い。完全に死にかけている。呼吸もしてないし、傷口からはこれでもかってくらい血が噴き出している。


 「真壁秋、大丈夫か?」


 「喜耒さんって、蘇生とか使えない?」


 「いや、私は」


 「葉山さん、蘇生とかできない?」


 「魔法スキルとか無い」


 クッソ、どうしよう。このままじゃ、この子死んじゃう。


 「椎名さんはどう?」


 腰を抜かしているような椎名さんは、震えて首を横に振った。


 その顔は恐ろしいものでも見るような、真白い顔で、僕の事をまるでえ信じられないようなものを見ている表情だよ。


 ああ、どうしよう、ほんと、勘弁してほしい、いきなり来られたら、完全な先制攻撃ををされたらこっちだって無意識に反撃してしまうじゃないか。


 この子、本気で僕を殺そうと襲いかかってきた。狙いすましている一撃が用意されていた、スゴイ技量の持ち主だ、ここまで間合いを詰められて接近されて、この黒い刃の生む風が頬に当たるその時まで気がつかなかった。無意に反応してしまった。加減なんてできなかった。いや出来たかもしれない。3連目の斬撃は止められたかもしれない。押して振り切らないのがやっとだったって思う僕は自分の技量の無さを嘆きたかった。


 ほんと、僕はダメだ。


 いい、今はいい。


 今はそう言う事を考えている時じゃ無い。この子助けないと。


 「ヒーラーどこかにいないかな、どこか、カズちゃんのトコまで、運ぶ、」


 笑ってしまうくらい僕、慌てふためいている。


 なんで勝手に襲撃してくるかな?


 本当に、もう、信じられない。


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