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第52話【放たれた蒼き暗殺者】

 こういうことに関してさ、だからダンジョンの組織の対立とか、僕のような一介のダンジョンウォーカーが心配するような事でも無いけどね。多分、黒の猟団の全てを知っている訳じゃあ無いけど、真希さんがいればなんとかなるだろうし、僕としてはなるべく巻き込まれないようにしないとね、ってくらいの気持ちかな。 


 「またあなたに邪魔をされたのね」


 って椎名さんはここで、初めて僕に向かって声をかけた。


 そうだね、彼女がこの組織を抜けるために斬首を望んていたとするなら、僕はそれを邪魔した事になる。


 「そういう言い方は無いだろう、真壁秋がいなかったら確実にお前は殺されていたんだぞ」


 と、喜耒さんが僕の事を庇ってくれる。やっぱり喜耒さんはいい人だ。


 すると、椎名さん、なんか急にテンションが上がったみたいで、


 「ああ、そうだ、狂王、なんならあなたが今、ここで私を殺してくれていいのよ」


 その狂王って言葉に確実に反応している葉山さんだ。優等生だもんね、聞き逃さないよね。


 「あの時、私はあなたを殺そうとしたんだから、その資格はあなたにもあるのよ」


 なんか、本当に笑顔でそういうんだよね、名案思いついたって顔して、いやヤケになってるのかな、どっちだろ? つまり、椎名さんを死刑に掛けられる権利は僕にもあると言いたいようだ。


 僕は、未だにそこに転がっている、当分起きそうも無い、僧兵みたいな人の黒いローブを剥ぎ取って、椎名さんにかける。


 だって、この人、本当に部屋着? みたいな格好でいるからさ、黒のタンクトップに普通のスラックス、ダンジョンの中というか普通に出歩く格好じゃ無いよ。


 「自分の服をかけないところが真壁秋らしいよな」


 と、喜耒さんに感心されてしまう。というか呆れてる?


 あ、ここはそういう流れだったの? いやだって、この僧兵な人、多分、この階層なら裸でもダメージ負いそうも無い感じだから、なんか平気かなって思ったんだよね。


 さすがに気絶している人の衣服を剥ぎ取るのってダメかあ、でも今更椎名さんにかけた黒のローブを再び剥ぎ取るのもどうかと思うのでそのままにする。


 「優しいのね、狂王様は」


 そうだね。椎名さんには優しく、僧兵みたいな人には厳しいみたいだね、僕。


 そして椎名さんは言った。強く、そして推し量るように。


 「私をここで討たないと、あなたも『処刑』の対象になるのよ」


 「そうなの?」


 椎名さんの言葉を喜耒さんや葉山さんに検証してみる。


 喜耒さんはこの組織の詳しい掟まではわからないって顔して、葉山さんが、


 「私も詳しい話は知らないけど、黒の猟団の統括者は、あの『斬撃の凶歌』に一番近いところにいる人物っていう話は聞いたことがあるわよ」


 へー、そうなんだ。じゃあ、その人も『歌う』のかな? 僕もまだ、あの『歌』は一度くらいしか聞いた事ないから上手に対峙できるといいけど。


 「『蒼く浮く烏』は裏切りを許さない、そしてその近くにいるものもよ」


 つまり、これで僕は黒の猟団さんたちから正式に敵で的になった的な感じなのかな?。参ったなあ、角田さんや春夏さんが一緒じゃないってのも手伝って、不安感が半端ないよ。 まあ、喜耒さんや葉山さんも相応に強いから安心ていえば安心なんだけどね。それでも、あの2人の安定感を失っている僕は心の底から湧き上がる不安感を拭えないでいる。 


 「今日はもう帰ろうか、こんな事になっちゃったし」


 そう提案す僕に、


 「そうだな、この案件は一度私もギルドに持って帰りたい」


 喜耒さんの顔はすっかりギルド幹部の時の顔になっていた。なんだろう、完全にこの事を事件化して解決しようという姿勢がはっきりとわかる。


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