第52話【黒の猟団(椎名さん)と一緒】
もちろん、僕らがとっていた行動は無実というか、事実無根と言うか、そんな大それた事を考えている僕らじゃなくて、誤解はすぐに解けたんだけど、それでも騒動の後に、ギルド内部では僕らの事をきちんと調査した方がいいって話も上がったらしくて、その折には、幹部さんである真希さんが、「あれは、ダンジョンの中で遊んでも、ダンジョンを使って遊ぶなんて考えてやしないから、調査しなくていいっしょ」の一言で僕らに対しての調査は断ち切れたらしい。
まあ、調べるくらいはいいけど、何気に真希さんは僕らの事を信頼してくれるよね。
ほんと、あの時いい感じで真希さんがいなかったらギルドとは全面対決する流れになってたし、それにあの時のクソ野郎さんもかなりいいタイミングで現れてくれたから、本当に助かったよ。あの出来事って今思い出しても冷や汗が出る思いだね。
何もかもが紙一重のタイミングであれほど最悪な事態が、奇跡のようにいい方向に回っていたからね。
そんな話をザックリと喜耒さんから聞いてから、今の時点でわかっているそれなりの事情を理解して、椎名さんの方を見たんだよね。
そしたら、葉山さんとなんかすごい話し込んでた。
葉山さんと椎名さん、そう言えばこの2人は、同じ深階層での冒険者同士で知り合いだったね。
「怪我は無いみたいだね」
「ええ、大丈夫よ」
「組織を抜けようとしたの?」
「そうよ」
と言う会話がされていた。
黒の猟団って抜ける人がいると、処刑を行う恐ろしい組織らしい。あれって、どうみっっても斬首されるような形だよね、しかも首を切り落とそうしているのは視覚的に防御力を強化した姿で、殺される側から姿がわからないような配慮としか思えないよ。
「双方に恨みが残らないように、手をかける方はあんな処置が施されるとは聞いたことがあるが、『黒の猟団』を抜ける為には一度死なないといけないと言う話は本当なのだな」
って喜耒さんが呟いた。
頷く椎名さんだ。
「『死を持って全ての罪が許される』、って言うのが理念だったっけ?」
葉山さんの言葉に、
「そう、殺された後に、蘇生されるのは関わりの無い心と体、ここを抜けるのには皆1度の死への覚悟を決めるわ」
「そんな事をあの多月さんが言うかしら? なにか変なのが組織に交じってない?」
って葉山さんは言ってた。
もちろん椎名さんにしてみれば、それは事実かどうかなんて関係なくて、少なくとも一回の死で組織を抜けるつもりだったらしい。
「馬鹿な、狂った思考だ、この事実はギルドに報告させてもらう、殺害を理念とする組織などギルドがその存在を許さない、ギルドは一時的に全機能を停止しても、黒の猟団を解体するだろう」
と喜耒さんは言った。というか宣言した。
ダークファクト的な危険思想、こう言う団体をのさばらせるわけには行かないのがギルドの立ち位置だからね。黒の猟団も結構な数がいそうだし、これって、ダンジョン内での全面戦争になるね。きな臭い空気が流れているよ。
宝箱の罠を解除するために、なんて目的が、とんだ内容になっちゃったなあ。