第51話【壊滅 黒の猟団】
ひとまず、怪我をしている、例の捕まっていた女の子の方に注意を向けると、そこには、僕の知っている女の人がいた。
ああ、雷鳴の人だよ。この人。
あの、例の、ラミアさんの時の、桃井君を執拗に追いかけていた人だ。ってか亡き者にしようとしていた人だよ。
「確か、君は冒険者で、『黒の猟団』の椎名芽楼だな」
と座り込む彼女を見て、喜耒さんはそう言った。あの時、ギルドは彼女の組織、『黒の猟団』とかいう冒険者団体に協力を仰いでいたと言う話だから、この辺は面識があるんだな、喜耒さん、ギルドの幹部だし。
「一応、『黒の猟団』構成員には、現在、高いレベルでの迷惑行為違反での拘束対象になっているのだが、これは構成員同士の内紛なのか?」
「ええ、組織を抜けようとしたらこのザマよ」
あ、怪我の程度とかは大丈夫みたい、思ったよりも元気に話しているよ、椎名さん。
「あの噂は本当だったんだ」
あ、葉山さん、割といつもの表情に戻って、怪訝な顔で椎名さんに言った。そういえばこの2人、知り合いだったね、以前葉山さんに聞いたことあるよ。
「静流、そう、静流も一緒だったのね」
と椎名さんは葉山さんの顔を見て微笑んだ。
ひとまず、僕にはチンプンカンプンだよ、確かに黒の猟団さんたちは概ね僕の敵に回る事が多いけど、ギルドとは協力関係だったはずじゃなかったかな、それに、噂って、もちろん、ダンジョンの事を全て知っている訳ではない僕だけど、葉山さんが怪訝な顔して言うきな臭い噂話があるって事で、それにはさすがに興味ある僕だよ。
葉山さんと椎名さんが何かを話し込んでる。その間に喜耒さんに色々と前回のラミアの話からの内情をザックリとした説明を聞くと、あの時、黒の猟団は確かいギルドから頼まれた仕事をしていたんだけど、実際は全く違う思惑で動いていたって話らしい。
あの場にいた何人かの幹部とか下っ端の構成員からの話で、その行動と倫理は、かなり怪しくて危険な物らしく、それはギルド発足の基本理念の1つである『ダンジョン内の安全』を大きく損ねる物だったらしいんだ。
喜耒さんの話によると、これには桃井君が関わっていて、あの時、ギルドは桃井君の発見と保護を頼んでいたんだけど、それに対して、黒の猟団の行おうとしていたことは、一見、ギルドの意思を反映させている形をとりながら実際は桃井君の発見と殺害というか隠滅。しかもその隠滅は永久にってのらしいから、この蘇生の可能なダンジョンにおけるある意味存在そのものの殺人だよね。
その後の調査ては同じ猟団の下部には全く異なる内容の命令が徹底されていたらしい。
これには多分、桃井君自身の正体というかその立場的なものが大きく絡んでくるのだろうと思うけど、今の時点では桃井君の正体を僕は全く知らない。彼の正体については、一部の人しか知らなくて、喜耒さんも詳しくは聞いていないらしい。気になるっていえば気になるけど、桃井君も今の時点では言いにくそうだし、その時がくれば話してくれるかもしれないので、今は保留でいいや。大丈夫、性格と行動は色々とアレだけど、基本桃井君はいい子だからね。それに人間誰だって言いたく無いことだってあるよ。
ともかく、そんな訳で黒の猟団の行動は、かなり由々しき問題行動な事態な訳で、実際は、あの時、僕らが守っていた桃井君とラミアさんだっったんだけど、ギルドの人達からしたら、僕らが桃井君たちを守っている黒の猟団を殲滅して、今まさに桃井君たちを亡き者にしようとしている、って見えたし、また最近になってわかった事だけど一部そう言う誤った情報を故意に流して者もいたらしい。