表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
295/1335

第49話【だから、『僕の女に手を出すなって!』なんちゃって】

 究極にして到達点な回復スキル、蘇生が可能なこの札幌ダンジョンにおいて、それでも人は死んではダメだし、殺されるのもダメって思うんだよ。


 僕も不思議なんだけど、その根拠と言えるものは何もない。


 ただ、そう思うだけ。


 急げ急げ急げ!


 と床を駆るも、多分、この距離を埋めるよりは、あの黒い渦の人たちの、女の子の首に向かって振り下ろされる剣の方が圧倒的に早い、つまり僕にとって絶望的だ。


 残念ながら僕には遠距離に対応する攻撃に準じる手段はない。


 後ろから、葉山さんが矢がビュンビュン飛んで来ているけど、残念ながらあの黒い渦には当たる気配は無い。遠距離では完全に無理みたい。


 もう、声出して、『やめて!』って叫んでみようか、って思ったところで、あったじゃん。手段と方法。


 僕は部屋の中心にいる黒い渦の男、そうなんだよ、あれ黒い渦になってしまっているけど、あの2名、確実に男ってわかるんだよ、どう言う訳か。


 でもって、捕まってるのは女の子じゃない。


 だから、大声で叫ぶ。 


 「僕の女に手を出すな!」


 本気の叫びだ。


 面白いくらいに室内に轟く。もう北海道ダンジョンから外の札幌中心街に下手をしたら、ススキノまで聞こえるくらいの勢いだよ。


 しかも、黒い渦の人たち、明らかに行動を止めてしまっているし。効果ありだね。 


 って確信して僕は黒い渦に挑み掛かる。


 1つはかすって、1つはかすりもしなかった。


 って、ここで、まただ。


 また来たよ、思わず見上げてしまうこの部屋の天井、春夏……じゃなかった、遥か地上からやってくる。


 思わずゾクッとした。でもそれほど怖くはないんだ。


 また、あの焦土みたいな視線を僕は再び感じる。多分、地表から、いや、さっきより近くに感じるから、ダンジョンの中かも。本当になんだろ、苛つきと、焦り、怒り? いや違うな、なんだろう、悲しみみたいなんだけど、もっと積極的な意思みたいなものも感じる。


 一体なんだろう。あ、なぜか今、突然春夏さんを思い出したよ。彼女の言葉。


 以前、この黒い渦と対峙した時の春夏さんが僕に言っていた事。


 「重心だよ、秋くん」


 そうだ、思い出した、どうして突然春夏さんの事を考えてしまったのかはわからないけど、おかげであの時の言葉、彼女の言ってた意味とか今ならわかる気がしたきた。


 あの黒い渦は消し去ることができない矛盾なんだ。


 つまり、本当の隠蔽なら姿を全く消すことが出来る、でもあの黒い渦は自分を消した上で、相手を攻撃したい。接触されず接触したいと言う矛盾の生んだ姿なんだ。暈しきれない体の重心、剣をふるおうとする力の中心。つまり。あの中心だけは攻撃を受けてしまう。 


 ただ、春夏さんは言うには「1ミリの遊びもないから、確実に中心を狙うの」

と言っていた。


 よおし。


 僕は剣を構えて、その中心に向かって突きの連撃を放つ。


 小さく硬い球体を突いてる感覚。


 何度目かの突きに確かの手応え、深くつかない状態で横に薙ぎ払う。


 脇腹から肩を浅く切られた黒々しい衣服を纏ったダンジョンウォーカーが姿を表す。続いてそこに矢の追加攻撃、またしても下半身狙い。完全に行動を封じてくれる葉山さんだ。助かるなあ。


 「こう言う方法もあるぞ、真壁秋」


 と残った黒い渦に体当たりを敢行する喜耒さんだ。なるほどね、向こうの当たりが小さいならこっちのあたりを広く取ればいいんだね。ギルドの戦闘教範なんだろうか勉強になるなあ、後で聞いておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ