第46話【ベテラン ダンジョンウォーカー】
「私たちの役目は、後ろの葉山に攻撃を通さない事だ、奴らは前にいる私たちを狙ってくる、来るぞ」
上空から襲いかかって来るガーゴイル3体、僕に一体、そして喜耒さんに2体が向かう。
どうしよう。
一応、防戦して、弾くとまたこのガーゴイル、上空に逃げるよね、できるなら倒してしまった方がいい気がする、僕の方は一体だし。
足の爪が僕の顔の辺り目掛けて襲って来る。というか、滑空してこの体制になるのは、ガーゴイルにとっては失速に他ならない。いいか、切っちゃうか。
って思った瞬間に、僕の横をものすごい勢いで何かが通り過ぎたよ。
そして、僕に襲いかかって来たガーゴイルが、地に落ちる。
あれ? 終わったのかな?
すぐ近くにいるガーゴイルの印象は思ったより大きい。上にいる時は、カラスが少し大きくなったくらいかな、って思ってたんだけど、目の前の足元に転がるガーゴイルは、割と小さめの人の大きさをしていた。全体的、翼は大きいけど体の部分は細くて、そのぶん手足が大きく見えて、そこに付いている鉤爪が凶悪に見えた。
そして、その胸には小さいけど、強健な矢が突き刺さっていた。
葉山さんだ。
僕の方の敵は片付いたので、喜耒さんをフォローに回ろうとするけど、彼女の方も僕と同じ結果になっていて、そっちは2体が喜耒さんの前に転がっていた。
僕は葉山さんの方を見ると、彼女、いつの間にか構えていた小ぶりな弓を下ろして、
「真壁くん、大丈夫だった?」
って聞いて来た。
「うん、助かったよ」
彼女の弓をまじまじと見つめた。
中長距離の攻撃って、魔法以外の直接攻撃系では初めて見た。ってかダンジョンでこういう射撃系を使う人って珍しい筈だ。少なくとも、僕の周りにはいなかった、あのギルドのメンバーを含めても、皆無だよ。
ダンジョン内では扱い難い武器の1つってことになっている。
概ね戦闘は、室内とか限られた空間になっていて、遭遇して、敵に認識されての戦闘になるから、敵に気取られないでの長距離からの狙撃とか、この種の武器の最大のメリットってないんだよね、ダンジョンって。
そんな状態で、狙って、引いて、打つって段取りの多い武器はどうしても敬遠されて、普通に剣とか槍とかの方が手っ取り早くて、さらにこの種の射撃って相当にセンスがいるじゃん。ともかく的に当てないと話にならないし、しかも大抵は戦闘は仲間と共にになるんで、下手をすると、混戦している仲間にまで当たってしまうっていう危険がある。
だから、弓とかってあんまり使う人がいないんだけど、葉山さんの場合は物の見事に使いこなしている、というか、完結した戦闘スタイルとして確立してしまっている。
だって、遭遇した瞬間に、連射(全体攻撃)で、即死攻撃だもの。
流石に、深階層でバチバチやっているダンジョンウォーカーは違うなあ、って思った。
深階層のレベルの高さを垣間見た気がした。
「ちょっと、真壁くん、そんな目で見られると、流石に私でも恥ずかしい」
と、ちょっと感心してからの羨望の眼差し的な視線を注ぎすぎたようで、思わず注意される。そうだよね、ちょっと見過ぎだよね、いくらなんでも、
「ごめん、なんか、葉山さん、すごくて」
って言うと、
「こんなの深階層に行ったら当たり前だよ、それに表層には出てこないけど、長距離武器を持っている人って割といるよ、大型モンスターに有効だからね。重宝されるよ」
そうなんだ。深階層では僕の想像のできない戦いが繰り広げられているんだね。