第42話【『僕の女に手を出すな!!』なんちって!!】
あの札雷館の君島くんさんは、性格と態度はどうしようもないけど、一応は男の僕から見ても確かにカッコイイしイケメンだけど、多分、このイケメン風味のお兄さんはその君島くんさんの足元にも及ばないね、日々の努力はすごいと思うけど、美容というか、そういう風に見せるための徒労というか、なんというか、ともかく、好意の片鱗でもなければキショいかな、この人。
で、葉山さんも喜耒さんもさっきからガン無視だから、好意的には捉えてないね。
だから、僕はもうちょっと頑張ってみようと思って、
「いや、だからやめてもらえません?」
と言うけど、イケメン風味のお兄さんは無視する。
全く意に介してないみたい。つまりあれだね、僕、多分員数として数えられてないね。
今の状況は鑑みて見ると、男、女、女、そして僕である子供って関係の括りだね。
つまり、彼、イケメン風味のキショい発情したお兄さんが、ナンパっていうメスを確保するために狩場にいるんだけど、そこに全く戦力外のきゃんきゃん吠えている子犬がいるって感じかな。
完全になめられているなあ、僕。
ほんとどうしよう。このお兄さん、全く戦力的なプレッシャーとか微塵も感じないんだけど、切りつける訳にも行かないしなあ、しかもギルドの幹部の喜耒さんとかいるしな、ほんとどうしよう。
そう考えて、閃いたんだよ、そうだ、これ全部僕の物ってことにすればいいんだよ。
ちょっと、彼女達、喜耒さんと葉山さんには悪いけど、
「あのさ、僕の女に手を出すなって言ってるんだ!」
って言って見た。
一応、凄んで、できないけど、なんとなく怖い人の外観的なイメージで、角田さん見たく、言って見たよ。
でも、自分で言ってて笑ってしまって、なんか、ちょっと無理、って感じで、限界だった。
もう仕方ない、斬るか、って思っていたんだけど、意外なことに、
「いや、ごめん、すまなかった、本当にごめん」
ってイケメン風味のお兄さんが言い出すんだよ。
その顔色は色相が抜けたような白い顔で、汗までかいて僕の方に詫びて、自分の仲間の方に言ってしまった。
おお、効果あったよ。言った自分がビックリだよ。
「よかったね、話のわかる人でさ」
と言うと、葉山さんが、
「真壁くん、今何をしたの?」
物凄い驚いた表情で僕の顔を真っ直ぐ見て、尋ねられる。
「ごめん、ごめん、思ってないから、自分の女なんて毛ほども思ってないから」
と、てっきり僕はナンパ男を追い払った『僕の女』的発言を怒っているのかって思ったんだけど、
「今、何かしたよね?、人心を操るような何か、ううん、心を支配する何かをしたよね?」
え?
「今ね、彼らの意識が一瞬で凍りついて、恐怖に支配されたの、多分、彼らの感じていたのは根源的な恐怖、死の恐怖だった」
まるで信じられないものを見るような葉山さんの強い視線、まるで僕がこう言ったスキルを持つ事を否定しているかのような面持ちだ。こんな表情の葉山さんは初めて見たよ。
僕の知っている葉山さんて、あくまで『同級生』としての葉山さんだからさ、ダンジョンウォーカーとしての彼女の顔を一瞬垣間見た気がした。
それにしても、僕、何かしたのかな? 普通に言っただけな気がしたけど、もしかしたらまた無自覚に、例の『王様スキル』を使用したんだろうか?
例の大通地下歩行空間の件もあるから、ちょっとは警戒していたんだけど、また何か滲み出てしまったんだろうか?
「ああ、すまない、葉山、今のは私のスキルだ、少し彼らを脅かした、あまりに執念深いのでな」
と喜耒さんが言うと、葉山さんはどこか安心したように、
「なんだ、喜耒さんか、またあの『王』とか言う卑怯なスキル?」
と言うと、
「ああ、便利に使わせてもらっている」
なんだ、喜耒さんか、そういえば彼女も僕と同じ王様スキル持っているんだよね。多分、僕よりはもっと上手にそれを使っていると思われる。なんて言っても前任者である麻生さんから引き継ぎの能力だから結構話は聞いていると思われる。いいなあって思って喜耒さんを見ると、なんか喜耒さんの顔がちょっと赤い。