第36話【ギルドの姫様(喜来さん)と一緒①】
学校の掲示板を眺めていた。
学校の正面玄関にある、よくクラブの人員募集とか張り出している掲示板。
ホッケー部とハンドボール部の募集のチラシが貼ってあった。その2つっていつも人員割れして、毎年クラブ存続の危機に晒されているって印象があるけど、僕の問題としているのはそこじゃない。
この高さ2m×幅4mの掲示板の僕から向かって右の恥に、黄色いリボンで区画されたスペースがある。大きさにして高さ0.5m×幅0.3mくらいの小スペース。
実はここの場所、ダンジョンウォーカー専用のスペースなんだよね。
そこにはメンバーの募集とか、長期や一時的な仲間の募集とか、オファーを待つフリーな人のダンジョンウォーカーのプロフィールが所狭しと並べられている。
この学校のおおよそ3分の2が、どのような形にせよ北海道ダンジョンに関わっている生徒だから、もうちょっとスペースを拡張した方がいいんじゃないかな、って思っているんだけど、先生たちの言い分だと、学生の本分は勉強を中心とした学生生活だから、これでいいの、って言われたので、このリボンの狭い区画だけ、ダンジョンウォーカー向けの記事というか情報でモッコリと盛り上がっていて、綺麗な花壇に一部、手入れのされない鬱蒼とした雑草の区画みたいになって、こんな状況に陥っていると言う訳だ。
見にくいやらもう読みにくいやら、読んでいる最中にその情報を書き込んである紙片が落ちるやらで、使いにくいったらないよ。
で、僕はこんなところで何をしているのかというと、今僕らのパーティーに致命的に欠損している能力というか技術の補填の為に、新メンバーを絶賛探している最中なんだよ。
あれから、ギルドの女子更衣室にイジェクトされて日から、約一週間以上は立っているんだけどね、真希さんが言っていた「久能次男」さんなる人からの接触って全くなかったんだよ。
今度こそ扉を開けば次男さんかな? って出てくるのか大抵ゴブリン(白帽子)だったりする。
真希さんに聞いても、「ツギって結構自由なやつだからな、そのうちあっちから接触してくるっしょ?」という生返事で、具体的なものではない。生はロイズのチョコだけにしてよと思いつつ、もう待ってもいられないからこうして積極的な行動に出ることにした。
ちなみに、角田さんやら春夏さん、桃井君は、概ね僕のやることには反対の意思を示すことはないので、この辺は自由にやらせてもらっている。
彼らだって、宝箱を開けられずに諦めるより、例えどのような物が入っているにせよ開けられた方がいいに決まっているもの。絶対に賛成だよ。
ちなみに、今日は僕1人だよ。
春夏さんは、化生切包丁の手入れに刃物屋さんの札幌支店と札雷館に、角田さんは今日だけは外せない用事があるとかで、珍しく1人でダンジョンへ、そして桃井君も大切な用事とかで、今日は僕の影には潜んでいない、と思う。いないよね? うん、大丈夫、今日はなさそう。