閑話休題3−20【喜耒薫子、衝撃の事件】
ちなみに真壁秋や雪華、東雲春夏やここにいる喜耒薫子が通う学校は可愛い女の子が多いのでも有名で、そのレベルは道外を飛び越えて全国区と言われている。雪華にしても奏にしてもかなりのレベルではある。しかし、そのかなりのレベルですら寄せ付けないのがトップ3の面々であり、あの東雲春夏ですら高くそびえ立つ厚い壁なのに、この上姫様とギルドで呼ばれる薫子まで加わっては、雪華にとって、もはやその先にいる真壁秋は難攻不落の要塞のように聳え立っている。
そんな雪華の今にもポッキリと折れそうな心を察してか、
「ほら、雪華、お前も負けてないべ」
と真希が言う。
優しいなあ、と雪華は思う。本当にありがたいなあ、と雪華は思う。
でも、それも優しくて残酷な応援だよなあ、って思う。
自身に問いても、あの2人にすがれる材料が見るからない。
元気のない、それでも笑顔で真希の顔を見ると、真希は満面の笑顔で言った。
「雪華、お前、さっきアッキーにパンツ見せたべ」
その言葉に、
「ああ!」
雪華は思い出す。ついさっきの事だ、突然、ダンジョン中階層からイジェクトされ来た真壁秋はよりによってギルドの女子更衣室に飛ばされて、偶々着替えをしていた雪華は真希と共にあられもない下着姿を見られた、完全にパンツ見られた。
「はい、見られました、赤黒のタータンチェックのパンティーとブラのセット見ららました、私、見られてたよ」
ちなみに、真壁秋にその印象は無い。ガン見していたのはショッキングピンクな真希の下着姿であるが、その辺は互いに自覚は無い。
と隣にいた奏にも同意を求めるも、その事実を情報としては知っているものの、その場にいなかった奏は、その雪華の勢いに、「あ、ああ、うん」と友達の勢いだけは失速させないように、なんとなく適当な相槌で同意に至る。
「な、じゃあ、一歩リードだべ」
と真希が言うと、
「はい、一歩リードですね、私!」
先ほどの今にも奈落の底に落ちて行きそうな勢いで落ち込んでいた少女の顔に輝かんばかりの笑顔が宿る。ちなみにこの時点で、パンツを見られる事によってリードを保てると言う価値観を持つ人間は雪華以外には皆無なのではあるが、まあ、本人が喜んでいるのだからいいのか、と皆思っているし、決してその価値観を掘り下げる人間はいない。基本、ギルドの人間は皆優しいのだ。特に気の毒な人間には優しい。
そんな、喜びもつかの間、そのパンツ見られたと言う雪華の言葉に反応したように、ハッとして何かを言いかけ、そして意を決して止めるなんとも煮え切らない態度を一瞬とる薫子であるが、それを見逃さないのが真希でもあった。
「なんだい、まだ何か問題でもあるのかい?」
「いや。別に、問題という程のことでもないのですが…」
どうも歯切れの悪い薫子だ。
「なんだい、アッキーに裸でも見られたってか?」
「え?」
思わず声を発してしまう雪華だった。それが事実なら、一歩リードした雪華をさらに抜き去る薫子である。もちろん、それは雪華の価値観で雪華視線であるが、だからこそ雪華にとっては大問題でもある。思い込んでいる優位性がこんなにも早く崩れそうになってグラグラしいる。