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閑話休題3−15【喜耒薫子、そうだ明日からにしよう】

 もともと、全てが相互協力という形のギルドには一般な組織のような上下関係というものは存在していないことになっている。しかし、実際は、ギルド創設以来一部の強力なダンジョンウォーカー達がが中心になってまとめているというのが周知の実情である。


 そしてさらにその中の中心人物が役職とかが無い以上、長とか責任者とかと言ったなんて呼び方になる。もちろん、それは、ギルドに関わる関わらないに因らず、ダンジョンに入ったことのあるダンジョンウォーカーなら誰もが知る事実だ。


 池上桜智もかつての思いを馳せるようにいう。


 「そうね、私たちの時も今思い出して見ると『可愛い女の子』だったわね、いつもあの

す『スライムの森』にいた人よね、ダンジョンに入るときはいつも見ていたんだけどねえ、ほんと、毎回、昼過ぎにダンジョンで『おはようございます』なんて声をかけてもらってたのにね、名前と顔が思い出せないわ、もういやね」


 と、自分の物忘れを恥ずかしそうに笑った。


 そんな取るに足らない話をして、隣人達と別れて、薫子は今日花に連れられて、真壁家の中に招き入れらた。


 外から見た時にも思っていたが、大きな家で、新しい家だった。


 中に入ると、新築の特有の木の香り見たな物が薫子の鼻をつく。そして気がついた時には人に招かれた家の中をジロジロと見回していた事にに気がついて、自身の非礼さに自ら頬を染める。あの狂王『真壁秋』の自宅だ、冷静を常にする薫子ですら好奇に心が動かぬわけもない。


 「ごめんなさいね、少し散らかってるわね」


 と今日花が恥ずかしそうに言った。


 とは言われるものの、中は、今さっきまで強盗と争った形跡なんて微塵もなく、片付いたものでたった。


 「家、新しいんですね」


 つい、薫子はそんな事を言ってしまった。


 「ええ、去年立て替えたばかりなのよ」


 と今日花。


 その顔は、自慢気と言うより恥ずかしそうな笑顔だ。


 そして、


 「どうせ、建て替えるなら『ダンジョン里親制度』の要件を満たせる条件にしてね、張り切っていたら、こんな大きさになっちゃったの」


 本州方面からのダンジョンウォーカーの志願者は毎年数を増している。一応は市と道の運営する、『寮』はあるものの、それも年々不足している傾向になってきている。特に、手元から子供を離す親にとっては、できるなら寮ではなくて、きちんとした大人がいる環境、つまりホームスティのような、この里親制度が好ましいとされている。このために、里親制度を目的とした増改築及び新築の場合は、道や市から補助金が割と多く出る。また、受け入れる子供の人数に応じての生活費もまた支給されている。


 一見すると道や市の財政を悪化させかねない政策ではあるが、長い目で見ると、結局、北海道の人口は増加して、この道外から優遇して受け入れるダンジョンウォーカー制度によって、その家族、関係者の積極的な北海道への国内の観光の需要もまたうなぎのぼりに増え、交通や経済は活性化すると言う効果を生み出していると言うのが実情である。


 ちなみに、真壁家においては、秋の部屋のある2階にはあと3部屋ほど余っていて、そのホストファミリーの家族の為の客間を入れるとさらに2部屋の空き容量があった。


 そのうちの一部屋に案内されて、その部屋に荷物を入れる薫子だ。


 今日花はと言うと、


 「今日は薫子ちゃんの為にご馳走を作るわね、期待してて」


 と薫子に留守番を任せて、とっとと買い物に出てしまう。


 1人、荷物と共に部屋に残された薫子は、


 「はぁ〜…」


 室内に入って思わずため息が出る。


 何も覚悟もできないまま、ただ今日花に甘えるように、あの真壁秋との共同生活が始まろうとしている。


 確かに、今日花のお陰で、こ自分の中に渦巻くドロドロした気持ちには一応の直地点を見出した薫子だ。


 今日花を頼りにして頑張ろう、そう思っていた。


 整理はついた。


 でも、あの真壁秋のことは別だ。


 まるで決して解けない塊の様に、薫子の心の中をゴロゴロとかき乱している。


 こんな状態で、この家の中で真壁秋に出会ったらどんな顔をしたらいいのか皆目見当もつかない薫子であった。


 少なくとも、笑顔は無理、だからと言って『よろしくお願いします』なんてとてもじゃないけど言えない、今の精神状態では不可能だ。


 それに、今日花がいない今、あの真壁秋と2人っきりと言うのも今の薫子にとっては想像を絶する恐怖以外の何者でもない。


 そして、逃げ腰の薫子は閃く。


 そうだ、明日からにしよう。


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