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閑話休題3−14【喜耒薫子、微笑み返す】

 そして、ああ、今日花の息子と出会ったのだな、というのがわかる。察してしまう。


 だから、余計に思う。


 自信を失うって状態は、同じ人類同士で比べて初めて行うもので、人外に対してはそれを思う必要はないということを。


 と思いつつも、この考えに至ったのは、ダンジョン適齢期を過ぎてからなので、今まさにダンジョン世代の子供には酷な話しかあ、とも思う両隣さんでもあった。そして思う、こういう高い壁に対して贖うってのが若さかなあ、とそう思うと少し薫子を眩しく見つつも懐かしい匂いを感じざるを得ない中年元ダンジョンウォーカーなお隣さんたちであった。そして自分のたちの通って来た道だと、そう思う両隣さん達だ。


 だから、何というか、いいアドバイスを、老婆心ながら、余計な事とは思いながら、氷野祐作は語る。かつて自分が巨大な戦斧をブンブン振り回して深階層で、『俺無敵じゃね?』なんてブイブイ言わせていた自分がある日の事、この今日花に出会って身も心も木っ端微塵にされた懐かしい日の事を思い出し、未だ心の奥底に突き刺さる鋭利な破片をしっかりと感じならが、言った。


 「なあ、お嬢ちゃん、空を自由に飛べる小鳥は自分を戦略爆撃機とは比べないだろ?」


 池上桜智はそんな言葉にウンウンと頷いて、かつて自分もダンジョン深階層、これは『最後の扉』にいけるんじゃないかしらと、信じて疑わなかった日々、自身の持つ魔法スキルと札雷館で鍛えた『洋式剣』の周りから言われる類なき才能が粉々に砕かれた日を思い出す。そして言った。


 「大丈夫よ、ほら、どんなに早くても原子力潜水艦はオリンピックに出れないから」


 比喩対象があまりにかけ離れ過ぎているために、しっくりというかうまく理解できない薫子であるが、もちろんアドバイスを送った側からすると、それが目的に他ならない。


 「いやね、人をバケモノみたいに、ね」


 と未だ自分の手の中にいる今日花は薫子に不満気に言うものの、『バケモノじゃん』と、隣人達は思うものの、現在ご近所としてとても良好な関係を築いている彼等は口には出さすに、薫子を含む今日花以外の3人は顔を見合わせて笑って流していた。


 その後、『市というか道というか国みたいな? のダンジョン科とういか係みたいな所』から来たとか言うマイルドな自己紹介をする塩谷 拓海と名乗る人物に簡単な事情聴取的な事を聞かれて、今回の事件で壊れた物や失ったものがある場合は申請すれば市のダンジョン生活科からの保険で修理等ができる事をザックリと説明されて、その後解散となった。


 真壁家を襲った強盗は合計7名、その後の調べでは市街地に待機していた者を確保して、合計は11名のそれなりに大きな窃盗団の犯行だった。


 ただ、この不幸な強盗達は、襲う相手の正体を隠されて当てられたと言うそんな形跡がある。まるで当て馬にするように、相手の戦力を分析するかのように、彼らと共に北海道に入り行動を共にしていた外円にいた3名の者の行方わからずその後も消息は追えなかった。


 そして、この出来事は、今後起こるより壮大な事件の初動に過ぎなかったことに、この時点ではここにいる被害にあった人物や、集まる治安組織ですら誰も気がつくことはなかった。


 敵はその背後を完全に隠蔽していた。


 敵の準備は刻一刻と勧めていたのだ。


 まさに、傘立てに挿してある真壁秋の剣ために、一国が本気になっていた。


 たった一本の剣の為にこの北海道札幌市に向けられ準備されている敵の戦力は、一個師団。


 既に戦端は開かれしまっていた。


 近く、誰も気が付かぬうちに、その小規模ながら戦争は開始され、そして収束する。


 もちろん、それは別のお話である。


 少なくとも、現状、この強盗達が切り離されてる以上、気がつきようもないことでもある。


 ひとまずは今回の事件の解決によって、ご近所さん以下、関係者はホッとしていた。


 薫子は今日花に連れられて、家の中に入ろうとした時に、ふと隣のご主人が、多分、挨拶のついでに、なんとなく訪ねたのだろう、こんな事を聞いて来た。


 「今のギルドの長ってどんな人なの?」


 即座に答える薫子で、


 「はい、工藤真希さんと言う方です、広報担当で、テレビにもよく出ている方が中心になってまとめてくれています」


 「そっか、おじさんの時も女の子だったなあ、小さくて可愛いけど北海道弁が酷くてさ、結構特徴のある女の子だったけど、名前が思い出せなくて、年取ったなあ」


 と元ダンジョンウォーカー、かつてはそれなりの実力者としてダンジョンを駆け巡っていた日を思い出し懐かしんで、そんな言葉をつぶやいたていた。



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