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閑話休題3−11【喜耒薫子、同病相哀れられる】

 お隣さん2名の共通認識としては、この強盗たちに寄せる思いとして、『無茶するなあ』と、『よりによってこの家に強盗って』と言うどちらかというと同情に寄った感情があった。


 そしてこの結果だ。


 襲いかかってきた強盗達は完全に無力化されて、怪我ひとつないご近所さん達が和気藹々とそれぞれの無事を確認しあっている。


 これは、決してたまたまと言う偶然ではない。このようなことはかなりの頻度で起きている事態なのである。


 そう、まさにダンジョンのある街、北海道の姿なのである。


 この街の子供達はおおよそ6〜7割がダンジョンウォーカーであり、そしてその人数はこの街にダンジョンが現れてから現在までの年月において、それだけの数の元ダンジョンウォーカーを生産して、今も尚し排出し続けていると言う事に他ならない。


 つまり、おおよそこの札幌市に住まう現役世代の中間層までの概ね5割が元ダンジョンウォーカーなのである。


 つまり、子どもの頃は無茶していたよなあ、と言う世代なのである。


 中学生から高校卒業までの期間、多かれ少なかれ、大なり小なり、強い弱い問わずに、ダンジョン内でモンスターと戦っていたかつての子供達なのである。

 ご近所と言われる最小の自治体、この街の1つ1つの町内会の潜在的な戦闘能力は某同盟国の一般装備の小隊規模を軽く凌駕すると言うのが、ここ最近の防衛省の見解である。


 つまり、それなりの戦闘能力を有した元ダンジョンウォーカーが街のいたるところに住んでいる。また、かつてスカウト組として各地から連れてこられた極めて高い能力を持ったエリートクラスと呼ばれるダンジョンウォーカーの殆ども、ダンジョン適齢期が過ぎた後も札幌市及びその近郊に定住している者が多い。


 ダンジョンで育ち、ダンジョン出会い、ダンジョンが切っ掛けとなって結婚して、ダンジョン関連の仕事をして、次のダンジョンウォーカーを育てるというサイクルがおおよそ20年の歳月をへて完成されているのである。


 そんな彼らはその能力の大きさに限らず、皆、社会性が高く、より善く地域社会に溶け込み、何よりこのダンジョンのある街の平和を愛している。よって、ダンジョンウォーカー同士の諍いはもちろん、ごく稀に目の前に起こる犯罪の類は自治するような形がこの街のあり方になってしまっている。


 刃物や武器が多く流通しても、街事態にそれを自療する作用があると言うのが、治安の良いといわれる理由でもある。


 だからそれを知るある程度の情報を持つ窃盗団やらそれに該当るす犯罪者集団はこの街に近づく事はない。 


 コンビニ強盗がコンビニ店員もしくは一般客に返り討ちにあう、刃物を持った通り魔が通りすがりのサラリーマンに捕縛される。たまたまイカの有名な夜景な綺麗なある都市に降りたった窃盗集団が、社員旅行の浴衣姿のOL達に全滅される。買い物帰りの主婦が暴力団組織を壊滅させる、などと言うことが、この町では割と日常茶飯事で起こりうる。実際には犯罪の発生率は高いかもしれないが、概ね組織的犯罪以外は法的組織の介入前に終ることが多いので結果として事件化せずに犯罪としては少なくなっている傾向があるようだ。


 「怖くなかった?」


 と今日花は優しく薫子に尋ねた。


 「はい、平気です」


 と薫子。それに対して、思い出し方の様に今日花は言った。


 「あ、そうか薫子ちゃんは、ギルドの子だったけ?」


 「はい、でも、強くはないんです」


 って自分で言ってて傷付く薫子だ。


 「いや、お嬢ちゃん、強い弱いは、この人の前で比べることではないからな。あんまりこの人に慣れない方がいいよ」


 と、助けに入ってくれた、隣の家のご主人がそんな風に薫子に語りかけてくれた。


 パトカー数台と、黒塗りの車が一台、警察官とは明らかに違う背広姿の人たちが数人出てきて警察官と一緒に、倒れている人、捕縛されている人を連れてゆく。


 犯行に及んだ人物たちはもう抵抗する気もない様だった。


 「一応聞いとくけど、大丈夫でした? 真壁さん?」


 と尋ねるのは、一応、一通り事情を聞き取りに来た警官に話を済ませて来た隣の家の主婦だ。


 そして、続けて、


 「あら、この子、喜耒薫子ちゃんだっけ? 知ってる知ってる、エリートな子よね、おばさん応援してるわよ」


 と話しかけて来た。


 そんな事もかつては言われていたなあ、と恐縮してしまう薫子であった。


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