第32話【セクハラ(覗き)弾劾裁判吊るし上げられるのは僕】
これは誤解だよ。
それに、さすがにこれはひどいと思うので言い返す僕。
「そ、そんなことはないですよ、最近、知り合いの女の子とも話すことできるようになったし、顔見て話せますよ、大丈夫です」
と言い返すも、何故か水島君にさえ寂しい人を見る目で見られている気がする。
「そうかい」
と言って、何故か真希さんは僕じゃなくて、春夏さんの方を見て言う。
「ねえ、春夏ちゃん、真面目に答えて欲しいんだけど」
と春夏さんの手を取って、じっととの目を覗き込みながら、
「もう、アッキーとはチューした?」
と、とんでもない内容を、普通の質問するくらいのノリで、昨日の晩何食べた?くらいのノリで尋ねる。
本当にこんなフザけた内容の質問を真剣にものすごい勢いで、春夏さんを追い詰める勢いで迫っている。
冷静になると、何言ってるのこの人?
「え? え?、あの、」
と春夏さんはもじもじだよ、なんかとても可愛くもじもじしているよ。
「したっけ、答えて、アッキーとはチューした? してない? どっち?」
もうね、今にも逃げ出したい感じの春夏さんを助けようと、僕も堪らず口を開く。
「いや、僕と春夏さんはそう言う関係じゃあないですから」
「お前は関係ない、黙ってろ!」
怒鳴られたよ、真希さんに、自分のことなのに黙ってろって言われたよ。
「ね、ね、春夏ちゃん、アッキーとはもう、チューしたんだべか? してないんだべか? どっちだべね? 言いにくかったら、頷いてくれるだけでもいいっしょ、ほれ、したの? してしたべか?どっちだべか?」
春夏さんは真希さんに両手を包み込むように掴まれているから逃げられない。
それでも、体はなんとか真希さんから遠ざかろうと外へ外へと逃げて行くが、それを許すような真希さんでもなかった。
追い詰められた春夏さん、
「・・・してません」
と蚊の鳴くような声で言うも、
「え? なんだって?」
と、耳の遠いふりした耳年増にさらに突っ込まれて、
「してません!、秋くんとはキスなんてしてません!」
半ばやけっぱちになった春夏さんはそう叫ぶと、もう泣きそうな目を伏せて、ガックリと肩を落とした。
「そうかい、そう」
と言って、真希さんは力の抜けた春夏さんをそっと抱きしめて、
「うん、よく言ってくれたね、辛かったね、でも頑張った、あんた、頑張ったよ」
と真希さんは春夏さんの背中をポンポンと叩いて、優しく慰めていた。
それを傍目から見る僕は、思う。
なんだこれ?
そして、僕、と言うか僕ら、ここにいる人、ちなみに今事件とは無関係のそこに働くギルドの人にまで向かって、勝ち誇るように、真希さんは声高らかに宣言する。
「これが証拠だべ、つまりアッキーはノゾキなんて出来るような人間ではないって事が証明できたってわけだべ」
と言った。
「いや、意味わかんないから」
そう突っ込んでくれたのは僕を疑ってやまない短髪な水島君だ。ここにいるみんなの気持ちを代弁してくれたって言ってもいい、全くその通り、意味不明だよ。