第31話【セクハラ(覗き)弾劾裁判開催】
真希さんを中心として人の出払ったギルドの事務室での客間スペース、一体何年使ってるんだよっている年季の入ったソファーに座って、話を煮詰めて、行き止まりに辿り着いている僕らに、突然、話の根本を砕いてくる人物がいた。
「そんな事言っても、こいつが故意で女子更衣室に入って言ったって事だって考えられる、むしろその可能性が大だ」
そこには僕の知らない人間がいた。
「あ、見回りご苦労さん」
と声をかけているから、ギルドの構成員だろう。僕と背格好は同じくらいの短髪な少年、彼は続けて言った。
「他の人がイジェクトとやらで強制的に飛ばされたってことは否定しない、でもこいつだけ1人なんらかのアイテムとか、例の『王様』とか言う謎のスキルで、女子更衣室めがけて飛んで来たって否定できないよな」
ひどい事を言うなあ。
「真壁先輩はそんな人じゃないです」
と河岸さんが否定してくれる。ほんとに良い子だよね、この子。
それしても、この人って誰だろ?
「君は?」
尋ねると、
「水島だよ! 水島祐樹だよ! 浅階層のジョージの時、一緒にいただろ!」
と怒られる。「あ、ああ」とは言っておくものの、うーん、ごめん、覚えてないや。
「あいつ、斬る?」
とか、春夏さんが物騒な事を言い出すので、その提案をやんわりと断っていると、真希さんが突然笑い出す。
え? どうしたんだろう、真希さん。
「いや、ごめんな、だって、こいつ、変な事言うからさ、おかしくって」
「だって、その可能性も否定できないじゃないですか? こいつだって男だから魔がさす事だって」
水島君の意見を真っ向から否定してくれるのは真希さんだ。
「いいや、アッキーに限って、そんな人間じゃあないよ、それは違うべさ」
と言ってくれる、なんのかんので、僕、真希さんに信頼されているんだなあ、ってちょっと感動してしまった。
すると、引っ込みがつかなくなったのか、水島君は、
「証拠でもあるんですか? いくら工藤さんの友達でもきちんと証明してもらわないと、こいつは単なるノゾキ魔ですよ」
とか言い出す。「こいつ切り刻む?」って化生切包丁に手をかけている春夏さんを抑えないと、って思っていると、真希さんがさらに大爆笑して、
「いやないない、だってこいつアッキーだよ、真壁秋だよ、そんな事、思って悶々する事もあるけんど、絶対にやらないって、できねーって」
なんか真希さんのその言い方って、信頼しているって言うより、もっと違っていて、嘲てる気がしてちょっと感じ悪いよ。
「だから、それを証明する何かがあるんですか?」
としつこく食い下がる水島君に、真希さんは、
「だって、こいつヘタレだもん」
の一言で切り捨てた。
ええ? 違うよ、って言いかけるも、さらに追い討ちをかけて、
「だから、アッキーは草食系男子どころじゃないべ、一生のうちに食事をとるかすら怪しい『無食系男子』だよ、それがノゾキなんてできるわけないべ」
さらに続けて真希さんは言い切る。
「こいつと付き合う女の子は、自分から押し倒さないと、こいつ何にもしないべ、こいつほど無害な奴って多分、窒素くらいしかないべさ」
「え? そうなんですか?」
と何故か河岸さんが過敏に反応していた。