第29話【ここは一体……女子更衣室???】
ああ、真希さんだ、真希さんがいる。
僕はボーっとした思考のまま、僕の顔を覗き込んでいる真希さんを見ていた。
「雪華、ちょっとこっちさくるべ、ちょっと見てやってくれ」
と真希さんに呼ばれた河岸雪華さんが、こっちにやってくるなり、
「きゃあ! ま、真壁先輩?!」
といきなり悲鳴を上げる。
あ、河岸さんだ、久しぶり、って思って、ちょっとこの状況を鑑みてみる。
ちょっと狭い空間、ダンジョンだよね、雰囲気というか感じるのはダンジョン内だけどダンジョンじゃないみたいな、なんだろう、普通にロッカーとかがたくさん並んでいる。室内な感じ、下は絨毯というかカーペットでみんな裸足だね。あ、僕靴のままだよ。なんかゴメンゴメン、ってアレ?
裸足??? ん?? 素足?? あれ?
僕は足元ばかり見ていた視線をもう一回、彼女達の上の方の、体の全体をもう一回見てみると、
「うわわわわ!!!!!」
思わず叫んで、目を塞いでしまう。
みんな裸だ! いや、下着姿だよ、って裸じゃないな、ああ、セミヌード、ヌードって!
「ちょっと、みんな何してるんですか?」
え? なんで? なんで? ってなる。夢じゃないよなあ。いや現実だよなこれ。
「ほれ、アッキー、こっち見るべさ」
って顔を持ってグイって真希さんに引き寄せられる。ちょっと、何、何?
「そっちじゃない、オッパイとかケツとか後にし、私の目を見る!」
え? あ? はい。
そう言って僕の目を覗き込む真希さんの目は、いつになく真面目で真剣だ。
「雪華! アッキーを見ろ、内臓まで欠損箇所がないか、あらゆる場所を調べろ」
「はい」
と言ってから、僕の正面に真希さんを避けて僕の横に立つ河岸さん、僕のわき腹に手を当てて、
「真壁先輩、失礼します」
と僕の体に因子(請負頭の変形)を放ったようだ。色々知らべられている。
「アッキー何か忘れている事はないかい? 自分が誰かはわかるべ?」
顔面を真希さんの柔らかく温かな手で、そっと万力の様に固定されている僕は頷くこともできない。
なんとか半開きの口で、
「はい(ふぁい)」
って言うのが誠意一杯だった。
「体に欠損箇所は認められません、多少の体重変化は正常の範囲内です、後心拍、血圧が高くなって興奮状態でいる様です」
「興奮状態って、故意に誰かに添付された異常ではないんだね?」
「はい、日常の範囲内です」
「性的好奇心から来るやつだべか?」
「は、はい、その、そうですね」
「つまりは、男の子が女の子の裸を見てドキドキするってことでいいってことだべか?」
「ええ、まあそうですね」
なんか問い詰められて河岸さん顔真っ赤だよ。
「じゃあ、アッキーは五体満足でいつもの間抜けなアッキーって事でいいんだね?」
「真壁先輩は間抜けじゃないです、大らかなんです」
いい子だよね、河岸さん。真希さんが普段僕の事をど思っているかへのそっとしたフォローも欠かせない。
「そっか、したっけ、アッキー、もう、私たちの肌けた姿を見て、ムラムラしてもいいべさ、ほれ、遠慮しないでいいべさ」
となぜか踏ん反り返っている。
河岸さんは、ロッカーの扉を開いて、その身を隠して顔だけこちらを見ていた。だよなあ、普通は女の子って彼女みたいに恥じらうものだよ。どうして、真希さんはブラとパンツ姿と言うアラレもない姿で、こんなにドヤ顔晒して堂々としてられるのか不思議で仕方ないよ。
そんなことよりも、ここに来て漸く僕も普通の意識が戻って来た。
そうだ、今、それどころじゃない。
あの一瞬から、みんなは一体どうなったんだ?
少なくともここに危険は無い。いろんな意味で修羅場だけど、でも真希さんと河岸さんがいるってことは、多分ここはギルドの施設内。ダンジョンの中だから間違いない。ダンジョンの中と外じゃ、まるで感じるものが違うから、それはわかる、この感覚はダンジョンウォーカーなら誰しも持っていると思う。
多分、ここ女子更衣室だ。