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第28話【飛ぶ!僕……】

 ぎゅいん! って感じに飛んでく僕。なかなか気持ちいい。


 で、その道すがら、というかすれ違いざまに刃を意識して切り抜ける。そんなリカバリーで挑んでみた。首太いなあ、巨人。剣は余裕で届く。


 本当に嫌な音。あの黒板に爪を立てるみたいな音が響く、うああ、この音苦手だよ。


 でも確実に手応えがあった、たぶん、深さ1㎝は切ったんじ。長さは1,5mくらいかな。


 とにかく巨人に傷はつけた。


 よし。勝った。


 多分、巨人にしてみればたかだか深さ1cmの傷なんて、人に例えるなら擦り傷よりも小さいほんと、毛ほどの怪我だと思う。


 そんな程度傷つけたからって、勝った気になるなんて、正直僕自身も以前なら思わなかったよ、あの札雷館漢館の修羅場をくるり抜ける以前ならね。


 僕はそのまま、巨人を飛び越えて着地。体が軽いから、着地した瞬間にまた飛びそうになるのを。わとととっと抑える。そして振り向きぎわに僕は叫んだ。


 「桃井くん、あれ、お願い!」

 巨人も生き物である。生き物じゃ無いかな、多分、生き物。生き物である以上、桃井くんのあのスキルが有効な筈、ダメならまた方法を考えるさ。


 「ああ、そうか、わかりました」


 そいうと、桃井君は杖を構えて集中する。


 「たかが1mm、たかが1cm、でも命ある肉体の傷は、その僅かな分だけ『死』に歩んでいるという事です、そしてその道程こそは僕の領分です」


 巨人は自身の首を抑えて苦しみようにのたうち始める。


 よかった有効だ。


 「セオリーってわけじゃ無いですよね、このような巨人の攻略は、おそらく前代未聞ですね」


 ああ、そうか角田さんはまだ桃井君の能力を知らなかったね。


 もちろん、僕はそのセオリーとかを使った訳じゃ無い。強いていうなら、知恵と勇気かな。あり合わせの材料で以外に美味しいものが出来てしまった感じ。

 一応、春夏さんはあの時、札雷館で説明はしておいたから、でもこうして目の当たりにするのは初めてだよね、戦闘が集結したことを悟っている春夏さん本当にびっくり顔だ。


 それにしても、桃井くんのこの能力って発動条件は色々とあるだろうけど、その分を差し引いても物凄いスキルだよね、強力って言うかエゲツないって言うか。敵に回したくは無い能力だね。


 巨人は首を抑えてこの狭い部屋の中でのたうち回るものだから、大地震が来たみたいに部屋は揺れる揺れる。


 程なくして、じわりじわりと傷口を広げられて巨人は負けを悟ってくれたみたい。


 その巨大な体を僕らの前に平服して見せた。緩めの土下座だね。頭を下げるって意味なら、それでもその頭な僕らよりも遥か上なんだけどね。


 もちろんだけど、僕らはその巨人の降参を受け入れて、ここで初めて敵も味方もなくノーサイドって形になって、巨人はその場を去った、と言うか例のこの部屋を囲む闇の中へ没すると、その姿はきえていった。


 やったね。これで宝箱は僕らの物だ。


 ツギさんを呼ぼうと振り返った時、僕は驚く。


 そこには誰もいなかったから。


 そして、いないはずの人間がいたから。


 あれ? 


 みんなは?


 僕の視界の中心にいるのは、見たことも無い女の子。


 どう見ても小学生女子。本当に小さな女の子がいた。


 その子はも深くかぶっていた鈍色のローブのフードを脱いで大きなツ、ちょっとだけつり上がっている目の中の綺麗な鮮血のように赤い瞳で僕の顔をじっと見つめてこういった。 


 「あれ? 発動しないなあ、おかしいなあ」


 僕は尋ねる、


 「君は誰?」


 「お兄ちゃん、ちょっとおかしな魔法抵抗あるみたいだね、まあいいや」


 そして、僕の胸のあたりを人差し指でトンと突いて、こう言った。


 「飛んで」


 小さな女の子の指に突かれた僕は、どう言うわけか、この小さな女の子の力にあがらうことができずに、まるで今まで立っていた床を見失ったように、グラリと何処迄も落ちて行くような感覚に襲われる。そして右も左も上も下もわからない僕は、次の瞬間、ありえない場所にいた。


 その場所がどうこうと言うよりも、その少女が僕に向けた笑顔が印象に残っていて、いまだ意識をさっきまでいたあの場所に置いて来てしまったかのように呆けていた。


 「しっかりするべ、アッキー」


 そう呼ぶ声に、僕はその時何一つ反応できずに佇んでいた。


 この次の瞬間、意識が覚醒した僕は、ある意味本当の修羅場を体験する事になる。


 今はただ、己が立ち尽くす現状さえも理解できずにいた僕だっだ。

 


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