第27話【跳べ!! 僕!】
は横薙ぎに広範囲に攻撃して来たよ、変化つけて来たなあ。
もちろん、みんな難なくよけんる。
大きな行動で背中が半分後ろを向いた、今度はこっちの番だね。
巨人が体制を立て直す前に、ひとまず一撃入れて見る。
取り敢えず当てられる所を、つまり低い下半身というか足のあたりを狙う。角田さんのいう『セオリー』だと、脛とかアキレス腱とかが弱点の巨人種もいたみたいだから、お試しって奴。
さっきの春夏さんの攻撃と同じく、ゲイン!みたいな音がして弾き返される。
うわ、硬!
普通に押して切れるような硬さじゃ無いなあ。岩の方がまだ柔らかいよ。石とか岩ってさ、あれで割と柔らかいものなんだよ。付け入る隙があるっていうか、まだ柔らかい。でも、この巨人はまるで、巨大なガラスとか結晶的な物に切りつけている感じがする。しかも攻撃した力なんて一切受け付けないで、全部返してくる勢いで跳ね返された。
やっぱりこの大きな体を維持するための全体質量の関係で、肉体を構成する密度とか違うんだろうか?
今後、大きなモンスターと対峙して行くことになる場合、色々と考えないとなあ。
「ねえ、角田さん、相手をどうこうできないから、僕がどうこできる魔法ってのもある?」
頭のいい角田さんは直ぐに僕の発想に気がついて、
「つまり、肉体強化とか、その辺ですか?」
あ、巨人がもう一回、ブレスの体制に入った、ちょうどいいかも。
「そうそう、それ」
「あります、けど、まだ一回も試したこと無いですね、割と慣れというか掛けられる方もそれなりのリスクがありますけど、行って見ますか?」
「あと、この剣の能力とか、切れ味とか上げられない?」
すると角田さん、
「エンチャントのことですね?」
そうそう、それな。
一回見たんだ、剣に炎とか氷とか雷を載せいて切るって奴。なんか強力だったよ。
「残念ながら、鑑定した時にわかったんですか、秋さんのその剣、いかなる魔法の影響も受けないみたいです、つまり魔法で能力を添加するっていうことができないみたいです」
ああ、残念。
「じゃあ、僕だけ強化するって方向で、いい?」
「わかりました」
春夏さん、なんか言いたげなんだけど、オロオロしている。大丈夫、すぐ終わるよ。多分。
基本、春夏さんて僕のことを守るってスタンスなんだけど、こう行った無茶する時って、よっぽどの事がない限り、口とか出してこないんだよね、あの時のラミアさんの大騒ぎの時も、雪華さんを庇って大怪我した時もそう。割と好きにやらしてもらえる感じ、過保護じゃ無いっていうかなんというか、見守られている感じがする。でもとっっても心配はするみたいな感じ。
「それで、秋さん、どんな感じの『強化』がお好みですか?」
「あの巨人がブレスを吐き出そうとしている瞬間の低い姿勢の時に、首辺りまで跳躍したい」
「わかりました、重力の緩和と筋力の増強、それを補う運動神経系統の強化ですね」
「うん、よくわからないけどおまかせで頼むよ」
その辺適当に見繕って、って馴染みの店に入った常連さんみたいな言い方になる。
頭上からものすごいプレッシャーが来る。巨人、今回も殺す気満々だ、僕らを殲滅しようとする殺意が半端ない。
「アル・ヅモン・ファナリ」
恐らくは三つの導言、魔法の効果は瞬時に現れた。
「うわ体、軽!」
これなら! 僕は一気に跳躍する。思ったよりも早い。というか飛びすぎている感じ、僕のプランは首もあたりまで飛んで、何回か切りつけるつもりだったけど、これなら完全い通り過ぎてしまう。飛びすぎちゃうよ。