第20話【遭遇・出現・密着、おお?】
精神的にアタフタしている僕に、真希さんは、
「折角来たんだ、今日はスライムでも倒して行くべさ」
って、僕の本来の目的を思い出さてくれた。
で、真希さんは、
「なんだ、アッキーまだ、武器持ってないのかい?」
って言われるから、頷くと、真希さんは僕に、錫杖みたいな、棒を渡してくれる。
「これを使うと良いべ」
って言ってから、
「他はみんな武器あるべな?」
って確認すると、
「じゃあ、モンスター対峙レクチャーを開始するべさ」
うわ、凄い、ギルドの最高幹部って言われる工藤真希さん直々からのレクチャーなんて、新人ダンジョンウォーカー冥利に尽きるってもんだよ。
「ほれ、アッキー、ちょっと待ってろ、春夏ちゃん指導したら直ぐにお前の面倒みてやるからな」
って言われて、春夏さんのところに言って、何か言ってる。
ちょっと距離をおいて、春夏さんが、真希さんに言われるままに、直径30cmくらいの緑色の染みが広がる床を突いて、何回目かにその染みが綺麗に消えて、真希さんが喜んで、春夏さんがお礼を言ってるみたいな感じで、本当にものの数分後、真希さんは春夏さんから離れて、僕の方に来る。
ん…………。
まさか、あの『染み』みたいのがスライム???
自分の足元を見ると、緑や灰色系統の色の染みが床の上にあるんだけど、これがスライムなの?
吹き上がる疑問に答えも見出せない僕に、
「じゃあ、やるべさ、アッキー」
って言って、僕の手を引いて、そのまま歩き出す。
「今日ならこの辺に現れそうなもんだべなあ……」
って言いつつ、キョロキョロしながら、大きな四角い石が積み上げられている、その片隅の方を見て、
「あ! いた!」
って喜んで、そっちに僕を引っ張って行く真希さん。
いや、スライムが、こんな染みみたいなのっていうなら、そこ彼処、至る所にいるでしょ?
って思うんだけど、僕はその手を引かれるまま、真希さんに連れて来られた、一辺が1mくらいの立方体の石の置いてある隅の方に、キラキラと銀色に輝く床の点を見つけた。
「ああ、よかったちょうど出現するとこだべさ」
って真希さんは言って、僕をその点の前に立たせて、僕の後ろに回る。
「ほら、アッキー、モンスターの出現だべさ」
って言って、僕を後ろから包み込むみたいに抱きしめて来るんだよ。
うおおおおおおおお!!!!
いや、だって、普通に真希さんに背中から抱きしめれれてるんだよ。うわ、ちょっと、ダメだって、いやあああ!!!
このパニックは、きっと喜びから来てるな、あと、ほんのりとした恥ずかしさと。
「ほれ、トキメキいてないで、ちゃんと前に集中するべさ」
いや、無理、だってこれ、恋人同士なホールな感じだよ!
その瞬間だった。
体の中、特にお腹の部分にズシリと重い違和感みたいな、今までに経験した事のない感覚。
「アッキー、そう、それが、遭遇感だべ、モンスターと敵対した時の感覚だ、忘れんじゃないべさ」
そう、囁く様に言われる。
そっか、これが遭遇感覚か。
そして、これがダンジョンウォーカーの責務『ダンジョンウォーカー一人あたり一日三体』のモンスター退治の目標への入り口。
本当の意味でのダンジョンデビューって事なんだな、って自覚してるけど、だから真希さん、抱きしめないで、僕の肩に顎を載せないで、耳に息をかけないで!
本当に、なんなの?
もう、これって普通にドキドキなんですけど!
これって、ピンチ?
窮地?
もう、わけわかんなないよ!
とっと、そんな体制だと、胸が胸が!!!
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