第19話【え? 僕も意外に有名人?】
そっか、そなんだ……、って思いつつ、あれ? それじゃあ、僕の名前を知ってる事の理由にはならないぞ、って思って、そんな顔して工藤真希さんを見てしまったから、だろうか?
「真希でいいよ、秋ちゃん」
って言われる。
おお、北海道ダンジョンのアイドルにして、最後の扉に触れたダンジョンウォーカーである生ける伝説の人に名前呼びを許されたよ。
「いや、そうじゃなくて、春夏さんはわかるけど、なんで僕の名前まで知ってるんですか?」
「新規入場手続きしたダンジョンウォーカーは、ギルドの方に入場の知らせが入るんだべ、春夏ちゃんと一緒に入って来たダンジョンウォーカーなら、名前くらいは確認するべさ」
って言われる。ああ、そっか、なるほどね。って納得しかけてる僕に、
「それに、たまにいるんだよ、入場する以前から話題になるダンジョンウォーカー、要注意人物って奴だべさ」
って言って、僕見てニッコリと笑うんだよね。
でも、僕は、この時点では、そっか春夏さんってそんなに……。有名人になるのも考えものだよなあ。って、自分の事は度外視して、大変だなあ……、くらいに思ってたよ。だって、まさか自分の事なんてわからないじゃん。
そんな真希さんを見てるけど、本当に、凄い可愛い。もう可愛らしさの暴力だと思う。そのくらい可愛い。
春夏さん的美人さんとは基本的に軸が違うけど、相当に美しい人だ。
「だべ、うん、ありがとうな」
って返事してくれる。
北海道弁が壊滅的に激しいけど、でも、見た目にこれだけ綺麗なら許される……。
そんなところまで考え続けて、ちょっと考え込む。押し黙って考える。
あれ?
なんかおかしいそ?
今の一連の会話って、僕、口に出して無いよな……。
うん、人の容姿とか、方言とか、そんな事を言葉で直接本人に言うなんて例え褒めてるにしても一方的で失礼だって、常識的に考える僕は、常識的に考えても間違いなく本人を目の前にそんな言葉は口にしない。
でも、真希さんは的確に僕の言葉に、いや思っていた事に答えていたよね?
そうなんだ。真希さん、僕の思うことに関して答えてくれてたんだ。
僕は、その時、驚愕した顔して真希さん見てしまって、あからさまに驚いた顔を見せてしまったんだよ。
そしたら真希さん、
「あ、今のは、秋の思考を読んでたんだべ、可愛いって思ってくれてありがとうな」
って普通に答えてくれた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いや、もう、ヤバイじゃん。
僕、もう、彼女の前で何も考えれれないじゃん。
で、いつの間にか僕自身も真希さんに名前を普通に呼び捨てにされてるよ、もう、親しげだよ、ちょっと嬉しいよ!
「アッキーもさ、今後、ダンジョンウォーカーやってくつもりなら、気をつけるべさ、深階層くらいに到達するダンジョンウォーカーなら、人の思考くらいは読む奴はたくさんいるべ」
って言われる。
ええ? そうなの?
じゃあ、僕、少なくとも、僕の思考を読んでしまう真希さんの前じゃあ、何も考えられないじゃん。
完全にパニクる僕に、真希さんは、
「仕方ないっしょ、アッキーは男の子だべ、したっけ、想像や妄想に文句言う気はないから安心して悶々するといいべさ」
って言われる。
誰だよアッキーって、もう愛称で呼ばれちゃったよ、初対面なのに親しげで嬉しいよ。
それに、妄想許可いただいちゃったよ。なに? この思春期男子に対しての理解の深さ。
思うくらいなら許してくれるんだ、いやでも……、ああ、もうツッコミが間に合わない。
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