第9話【秋様の下僕、桃井茜参上!!】
以前、ダンジョン内であの黒い人たちと対峙したからだろうか? 多分年齢的にはそれよりも上で、こう言った剣道とかを本格的にやっている人たちに囲まれている僕は、何の緊張感ももてすに、ただ佇んでいた。
ヤバいなあ、ヤバいくらいに怖くない。
もっとも、ここに集まっている、札雷館有志一同さんも、本気で僕をどうにかしようなんて思ってなくて、ただクソ生意気な中学生をちょっと小突いてやろうくらいのものな感じでいる。
もちろん、僕だって彼らの好きにさせるつもりもない。
春夏さんには悪いけど、この辺で一度きっちりと、こちらの勢力をシメておかないととは思っていたんだよね。
春夏さんには悪いけど、本当に、いい加減にして欲しいもの。
で、この辺でいつもなら春夏さんあたりが出てきていい感じにこう言った状況を散らしてくれるんだけど、いないよね、さすがに女人禁制だもんね。
と一瞬、キョロキョロと周りを見渡し、春夏さんの不在を確認する僕を見て、君島くんさんが、
「馬鹿め、誰を探している? 今日は、春夏もいないからな、春夏は今、東雲先生と一緒にお出かけの筈だ、基本、あの子は先生の言うことには逆らえないからな、今日はお前の味方は誰もいないぞ」
よし、安心した。今日こそ心置きなく、この君島くんさん以下全員を思う存分ボコれるな。
あ、っでも、この剣じゃあまずい。普通に即死になってしまう。僕少年法とかで守れているけど、さすがにこのノリで人殺しまではしたくないしなあ、まあ、徒手で入って、いい感じに何人か倒して、その間に倒れた人から竹刀なり木刀なりを借りるかな。
あ、でも僕、木刀とか使えないや、だからまたマテリアルブレードの平たいところで引っ叩こう。
などと言う算段を頭の中でまとめていると、
「秋様、ファイトです」
って突然背後で囁かれるから、かなりびっくりした。
「うわあ! 桃井君なんで?」
「秋様のそばには必ず、この下僕めがついております、ご安心ください」
振り向くと、いつもの格好の桃井君がいた。普通にさりげなく、さも当然と出現した。
これには君島くんさんも驚いていて、
「どっから湧いた?、さっきまでいなかったぞ」
本当に、ニョッキっと生えてきた感じ。
どうして?、と言うより、どうやって? を知りたい。
「暇…、じゃなくて、秋様が心配で付いてきました。気配を消して影に忍んでいました」
「僕はこうして、人の影に入れるんです、って言うか人の影のあるところにいると、完全に気配というか存在自体を消せるんです」
暇だったんだ。そんな感覚で、僕に気取られず忍んで付いて来られてもなあ、まあ、やましいことないからいいけど、でも急に現れるのはやめてほしい。本当に心臓に悪い。
「期待したほど面白くなかったけど、今は面白くなってますよね、秋様」
この状況で、屈託無く笑顔でそう言うから、この子本当にわからないよ。まあ、僕もそれほど危機も感じてはいないんだけどね。
「くそう、お前、卑怯だぞ、1人で来いって書いたあっただろう」
いやいや、これだけの人数んで囲っておいて、しかも相手は幼気な中学生1人(2人になっちゃったけどね)を、それをお前が言うのかよ、言いかけたけど、まあ、乱暴者に卑怯者が追加されてしまった訳だね、僕の評価としては君島くんさんの評価はこれ以下に下がる事無いってところまで下がっているから安心していいよ。常に底辺だから。