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第6話【段ボールミミック】

 蓋の部分をバクバクさせながら、避けてよろける僕を追いかけて来る。


 基本、膝くらいの高さまでなんだけど、油断してると、驚くくらい飛ぶ。顔のあたりまで飛んで来る。


 気がついたら、頬を数センチ切り裂かれていた。


 よく見ると、ダンボールを閉じる為のホッッチッキスの大きい版の金物が、そのダンボーの牙みたくなっていて、その二つの牙で僕は攻撃されたみたいだ。


 箱だよ、ダンボールだよ。なんだこれ?


 「秋さん、ミミックです、この辺のモンスターの中では結構手強い方です、欲の皮の突っ張った人が不用意に開けようとしてよく襲われるモンスターです、だから罠の類ではなかったって事です」


 それって、僕が案によく深いって言いたい? あ、10万円金粒は無事だろうか?


 なんて考えていると、おおっと、危ない!


 よろけながらも、なんとか横に一閃、剣を薙ぎ払う。


 結構、ダンボールミミック、早くて、全体を捉えられないけど、蓋の一部は綺麗に切り取ったみたいな形だ。あ、ラッキー、牙の部分をそっくりそのまま切り取れた。


 で、そのまま、ダンボールミミックの奴、一度は距離を取るのかと思いきや、そのまま勢いを殺す事なく、切られてもへっちゃらな勢いで僕に突進してくる。


 「秋くん、危ない!」


 間に春夏さんが入ってくれる。


 そして、頭らか春夏さんが、ダンボールミミックの食べられてしまった。


 「春夏さん!」


 春夏さんは、そのまま、頭から牙を失ったダンボール箱の蓋の部分にガシガシ噛み付かれている。当の春夏さんは動きもしない。


 特にダメージを受けている様にも見えないけど、なんか、側から見るとダンボール箱を頭にかぶって遊んでいる、ハッチャケった女の子みたいで、春夏さんには悪いけど、なんか笑える。笑ったらダメだけど。


 「秋様、笑っちゃダメです」


 って、あ、笑ってるの桃井君の方じゃん、ずるいなあ。ダンボール箱を被って見えてない春夏さんが聞いたら本気にするじゃないか。


 角田さんも声を殺して笑ってるし、ほんと、みんなやめて、僕まで笑ってしまうよ。


 こう言うシュチュってさ、普段真面目な人が陥った時の方が落差が激しくげ滑稽に見えてしまうよね。


 本当に、ダンボール箱にガシガシと噛まれながら、身動きひとつしない春夏さんに、お笑いの神様が降臨、って感じだよ。


 でも春夏さん、そのダンボールミミックを難なく脱いで(?)片手に持ったまま、化生切包丁で一刀両断して、さらに切り刻んで、文字通り切り捨ててしまう。


 「秋くん、無事?」


 って聞いてきてから、


 「頬、切ってる、すぐに直さないと」


 と言うとすぐ様、角田さんが魔法で治してくれる。


 「今回のことは秋さんの不注意ですからね、今後はもっと慎重にしてくださいね」


 と余計な一言までついてきた。


 「春夏さんも、怪我無い?」


 「私は大丈夫、秋くんが牙を削いてくれていたから平気だよ」


 と言ってくれた、よかったよ、あのホチキスの歯のデカイ奴、偶然でも切り取れて、春夏さんの顔に傷でもつけようもんなら、多分、僕、春夏さんのかあさんとか、お父さんああたりに殺されるんじゃあ無いだろうか。


 「どうします? ひとまず今日はこれで戻りますか?」


 って角田さんが聞いてきたけど、そうだよね、ここの階から、各室内にいるモンスターは宝箱を落とすんだよね。


 もう一部屋くらいいいかなあ。


 そんな僕の、甘すぎる考えを悟ってか、角田さんが。


 「なんか変なこと考えていませんか?」


 「いいえ、別に」


 「例え、宝箱が出現したにしても、それを開けるスキルがない以上、諦めるしかないんですよ」


 「まあ、そうだよね」


 「もしかして、さっきの一連の宝箱からのミミックへの流れで、なんとかなるな、とか考えていないでしょうね、秋さん」


 「ハハ」


 思わず、笑ってごまかしてしまった。


 「あ、秋様、宝箱です」


 え?


 「ミミックが宝箱を落としたみたいです」


 なりかけコボルトが落とした宝箱がミミックでそのミミックがさらに宝箱を落としったって事? なにそのマトリョーシカ?


 今度は『楽天』の空き箱の再利用みたい。またダンボール箱だ。でもさっきよりはだいぶ小さい。


 「開けるんは危険なの?」


 さっきの段取りで、角田さんが罠の有無を確認する。


 「あー、これは罠がありますねえ、残念ですか諦めましょう」


 「そっか、じゃあ、無理だね」


 と、まあ、そんな事を言いながら、部屋を出て、扉を閉めようとした瞬間に、僕は駆けた。


 僕は、角田さんに止められる前に迅速な行動にでたんだ。


 一気に開けてしまえ。


 「あ、秋さん!」


 いや、さっき大して事ないって言ってたから、何かあったら、素早く避けるよ、危険察知の能力にしたって、常日頃からビビリな僕はそうとな物だあるよ。


 本気になった僕を止められる人間はいない、少なくともこの宝箱の中身が気になってしゃーない僕は今までで最大の速度を出す。


 「秋くん、ダメ!」


 と言う春夏さんの声には若干の後ろ髪を引かれたけど、ここは黙って見守って欲しい。信じて、僕の欲深さをじゃなくて、危険回避能力を、罠だって、スッパーンと避けるよ、安心してね。


 「秋様、ファイトです」


 うん、頑張るよ、桃井君。


 僕は徐に、箱を開ける。さあ、来い、トラップ!


 なんの危険も感じなかった、だから、僕は顔面にベッチっと何か当たるまで、まったく気がつく事なく、そのままの体制で僕の蛮行とも言えるトラップからの報復を受けたんだ。


 なんか、目にベッタリと何かがくっ付いている、棒状の柔らかい何か。なんだろうなあ、ベタベタする、そして程よい甘酸っぱいい香りが、果物特有の匂いが鼻をついてやってくる。



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