第4話【相手の攻撃が触れたら、こっちから行くのが家のセオリーだから】
中階層なら破格なドロップアイテムらしいんだ。
「あ、でもこの辺のモンスターを倒しても、銅くらいがせいぜいなので、一日倒し続けても稼ぎは数百円と言ったところでしょう、レアメタルや貴金属とかを出して来る奴らはもっとずっと奥です、ダンジョンウォーカーが『冒険者』になれるのは、深階層に近いところからですね」
でもまあ、このレッドキャップは金を持っていたってことなんだ。
その小さな指でつまむくらいの大きさの金を僕に差し出して来る桃井君。
確かに見れば金色なんだけど、今は血の色の方を多く纏って滴っているものを差し出して来る桃井君て、普通にニコニコしている。死体とか平気なタイプなのかな? 僕は、流石に自分たちのやった事とはいえ、ちょっと引いてしまっている。
そんな僕の態度を察してか、桃井君は、
「あ、秋様ごめんなさい、僕が持っていますね」
あー、でもこう言うことに慣れていかないといけなんだよね。と思って、
「大丈夫、持つよ、これがダンジョンの生業なんだよね」
と言って手を差し出そうとするけど、
「いいですよ、秋様無理しないでください、外の世界の人はこう言う事に慣れてないですから、僕、持ってますよ」
と言った。外の世界?
「あ、大丈夫です、取ったりしませんよ、そこはこの下僕めを信用してください」
なんて必死な様相で言うもんだから、
「いやいや、そんな心配はしていないよ、信用してるよ、桃井君」
と言うと、本当に心の底から安心したように、
「はい、絶対に無くさないです、命に変えても守りますね、金」
とか言うし、まあ、それぽっちの金なら桃井君の命の方が遥かに大事だけどね。っていうか桃井君の命はお金には変えられないでしょ。
「いや、秋さん、一応、それ市場価値で10万円くらいの価値ありますよ」
と言ってもないことに答えてくれる角田さん。
「10万? 10万って、あの10万??」
どの10万かって話だ。
僕の知っている10万だとしたら大変な金額じゃあないだろうか? だって、1万円が10枚なんだよ、千円札なら100枚じゃん。見たことないよ、そんな大金。
「いや、もう帰ろう、で、帰って換金しよ」
そんな大金持って、ダンジョン探索なんて気が気じゃないよ。
などと取り乱す僕は、ここで、数分間の説得された後に、再び、ダンジョンの深部へ向けて歩き出すことになった、一応、あと1体敵と戦ったら、地上に出ることにした。
大丈夫かな、落とさないかな10万円の金の粒。
心配する僕を他所に、今のレッドキャップは道すがらの固定の敵(必ずゴブリンが出るって言われている場所らしい)だったので、今度は室内に入ってみようと言うことになった。
扉を開くと出て来る敵だね。
以前も、浅階層でも何回かあったけど、さすがに中階層にもなると、その扉の前に立つと中からやって来るプレッシャーとかが違う。
「じゃあ、行くよ」
と生唾を飲み込みながら扉に手をかけて、ゆっくりと開く。
その扉の向こうから、真っ暗の中から突然飛び出して来る牙と生臭い息、そして咆哮。
「うわ!びっくりした!」
思わず斬り伏せてしまったよ。
一体、なんだったんだろう?
「お嬢ちゃんもデタラメな強さですが、秋さんも大概ですよね」
なんて角田さんが言う。
「すごい! 秋様、強い!」
桃井君に至っては、なんか凄い感動してくれている。いやあ、それほどでもあるようなないような。
まあ、いきなり攻撃されたら反撃しちゃうじゃん。
「今の流れでは、完全に相手の先制攻撃が成功していました。普通、ある程度のダメージを食らってこちら側が不利になっての戦闘が開始される筈なのですが、それが無効化されました、て言うか、こんな事可能なんですね、初めて見ましたよ」
とか言うけど、まあ、家では普通かな?
相手の刃が皮膚に触れた瞬間の相手への攻撃って、小学生くらいからできなきゃって言われてたよ。