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第1話 【中階層始まる】

 今日から中階層、張り切って北海道ダンジョンを突き進む僕らを、いきなりの歓迎でもてなしてくれるのは、あの、有名で最もポピュラーで、なお最近手強いんじゃないかって言われる、あの『ゴブリン』さんたちだった。


 あはは、ゴブリンかよ、ゴブリン。なんだゴブリンか。


 中階層も入門編みたいな、そんなチュートラル的な、所謂、まあ、手加減的な事を期待していた僕なんだけどね。


 「レッドキャップゥゥゥゥゥ!」


 思わず僕は、角田さんに言われた事を反芻して呟こうと思ったら、いきなり強撃を受けて、叫んでしまったよ。


 「ゴブリンの中でも、非常に強い個体すね、赤い帽子を被っているところから、そんな名前がついたらしいです、ちなみに普段は白い色の帽子をつけているゴブリンが敵の返り血で真っ赤に染まったというのが通説みたいですか、あれはどう見ても植物由来の顔料ですから、ただの噂みたいですね」


 こんな状況だけど、いつも通りの博識ぶりを余す事なく披露してくれる角田さんだ。なるほどね、あれ、普通の赤白帽みたいなものか。


 などと感心している間にゲシゲシと攻撃を食らう。剣で受けているものの、かなり推し揉められて、体制を立て直して、この、っと思って攻撃をするも、振り下ろす剣の先に既に奴はいない。


 こいつ、強いよ、それに早い、ゴブリンって、勝手なイメージだけど、棍棒とか、ナイフみたいな獲物を持っているって気がしていたけど、こいつ、自分の体くらい大きな鎌というか、両刃の釜で斧みたいな扱い方もしてくるから、攻撃が重いよ。多分、赤いから、通常のゴブリンの3倍くらいの、おおっと、と受ける剣が腕ごともって行かれる。いや、3倍どころ騒ぎじゃないぞ、この赤ゴブリン。


 「秋様、ファイトです」


 とかなり戦列から離れた所で桃井君が応援してくれている。


 うん、ありがとう。


 それにしても、中階層に入ったら一気にこれか、浅階層の時に比べると敵の強さが半端なく上がっている。こんなに違うものなんだね、なんて思っていると、首元に鎌の刃が差し込まれてくる。おっと、危ない。


 「秋様、ファイトです」


 うん、ありがとう。


 桃井君の応援にもう一回身を引き締めて、と。


 一度仕切り直して、もう一回赤白帽に挑みかかろうとすると、今まで普通の白ゴブリン相手に戦っていた春夏さんが、こちらに来る。


 「秋くん、変わって、私に試させて」


 と、新しい、武器を一振り、さっきまで戦っていたゴブリンたちの血を払い落として言う。


 ああ、新しい武器の性能を試したいんだね。さっきまで戦っていたゴブリンたちじゃ、物足りなかったみたいだ。


 「うん、いいよ、残りは僕やっておくよ」


 「大丈夫、もう全部終わったから」


 うわ、本当だ、あの数のゴブリンを既に殲滅している春夏さんだった。


 「秋様、ファイトです」


 いや、僕、もう頑張る所ないから。


 そして、春夏さんは、僕と赤いゴブリンの間に入った。


 その春夏さん、二、三度、目の高さでまるで8の字を描くように振ると、今度は、その剣を上段に構えた。上級者が、それも何段も上の実力者がそうでないものを誘う構えだね。俗に言う後の先とかのやつ、僕は出来ないけど知ってる。


 そして、振り上げた武器は、今回から、この中階層から新たに春夏さんのために造られた剣と言うか、刀と言うか、なんだろう、それに類似する武器。


 今回、札来館が全面バックアップしての製作だったんだけど、それで足蹴なく道場に通っては調整を繰り返していたんだって。造られている間は、春夏さんは腕の怪我というか疲労による損耗の回復に勤しみ、そして、出来上がる頃、この武器が完成、そして、現在に至るって訳なんだ。


 ちなみに、今回、この武器を作ったのは、河岸製作所でもなく、数ある武器メーカーでもないよ。


 今回製作に当たってくれたのは、北海道でも有名な『刃物専門店』、春夏さんの、「家にある出刃包丁の切れ味が理想」と言う言葉を受けて、彼女のお父さんが、その本店に駆け込んで、それに札雷館が一緒になって、製作をしてもらったそうだ。


 だから、あくまで『包丁』の延長だそうで、銘とかも無い、強いて名をあげるとしたら、その包丁に刻まれた、多分、商品名『化生切包丁【別誂】 春夏』との明記されている。


 それに作りが本当に包丁そのもので、普通、刀って先端が曲がっている方に刃つくんだけど、この化生切包丁は、そうじゃなくて、真っ直ぐな方に刃が付いている。


 なんか有名な幕末剣士が持っていた逆刃刀見たく見えるけど、でも包丁の基本概念とかがしっかり残った作りになっているんだよ、大きさも、刀というより野太刀に近くて、背の方なんて、完全に打撃目的で使える厚さがあるんだよね、包丁で言えば、その背で魚の骨を砕くイメージな感じでさ。


 あの大きさだったら、普通に人の骨も砕けてしまえるよね。


 そんな新装備な春夏さん、周りをちょこまかと動き回る赤ゴブリンに一瞥もくれずに、ジッと待つ。


 何度か、春夏さんの間合いに入ってくる赤ゴブリンだけど、踏み込んでも攻撃されないと悟って、一気に背後から距離を縮めてくる。


 高く掲げていた剣先、いやこの場合、包丁先か、それがピクッと動いてからの振り向きながらの一閃。いや、一撃じゃあないな、うわ、見えない。


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