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閑話休題2-4【工藤真希も一緒に行きたい】

 当日、雪華達はギルド本部の前に一列横隊。


 ギルド構成員が5名、少し離れて、真壁秋と東雲春夏が並んでいると行った具合だ。


 「いいかい、浅階層のジョージを倒して、無事に家に帰るまでが、今回のイベントだべ」


 と檄を飛ばすのは、広報で、事実上のギルド最高責任者である工藤真希本人であった。


 「浅階層のジョージはそんなんい強くないよ、したっけ、油断するとはんかくさい目にあうべから、油断すんじゃないよ」


 と、いつものように、あの人を小馬鹿にした感じではなく、普通に、人の上に立つ者としての真希の姿だ。その後ろでは、麻生一二三が静かに皆を見つめていた。


 「じゃあ、麻生、行ってくる、留守を頼むよ」


 と、真希は普通に今回の挑戦者である7名に加わろうとするが、


 「待て待て待て」


 と麻生に制御されてしまう。その麻生に本当に不思議そうな顔をして、


 「何するべ?」


 「君は、いけないだろ」


 北海道ダンジョンの常識として、誰もが知る事実なのだが、浅階層のジョージは、一度しかエンカウントしない。つまり、真希が出てゆくと、この新人7名はジョージには会えない、だから、中階層にはいけないと言う事になる。


 「君が行くと、ジョージは現れない、毎回説明していると思うのだが」


 「心配だべさ、こいつら、みんな新人なんだ、私がついて行ってあげないと」


 「心配だが、しかし、ここは彼らを信じてだな、って事も毎回言っているぞ、工藤」 


 ギルドの新人にとっての一種の通過儀礼。割と諸先輩からも話は聞いていたものの、本当に過保護な真希だった。


 ちなみに、ギルド創設以来、数えるほどしかいない生え抜きの喜耒薫子も、かつてはこのやり取りに巻き込まれている。工藤真希にとって、どれ程の能力があるダンジョンウォーカーも、皆等しく、新人は守るべき存在のようだ。


 優しく時間を無駄にしつつ、後ろ髪を引っパって行かせまいとする工藤真希を置いて、麻生の掛け声によって、新人隊はようやく出発する。


 ちなみに、この各階層毎に存在するジョージの情報の流通は、このダンジョンではご法度とされていて、挑戦する各人がそれぞれ、予想を抱いて準備するのが通例になっている。


 と言うのも、この、1度しか出会えいないと言うのがネックになっていて、いつの間にか経験者は語らず、未経験者は訪ねず、と言うのが通常になってしまっている。


 それでも、ほぼ毎日『浅階層のジョージ』への挑戦は続いている。


 誰でも勝てる相手。紙ゴーレムと同等程度の危険性。


 それでも、このたった一回だけの挑戦を失敗することで、それ以降の階を望めず、特に浅階層を誤ってしまって、浅階層に固定されるダンジョンウォーカーは少なくはない。


 そう考えると、工藤真希のあの心配も決して行きすぎた物とも思えなくなるのも不思議はない。


 おおむね成功する。


 だが、確実に失敗する者も確かにいるのである。


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