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閑話休題1-11【今も残る伝承 殲滅の凶歌】

 この場合、少年を擁護するわけではないが、彼の身長はあくまで平均的で、奏が大きいのである。もう少し顔が大人びれば、高校生とも思えてしまう。 


 「あのな、お前よりも多い数を当たって、どうして、雪華が早いかわかるか?」


 「そんなのたまたまだろ」


 「雪華はちゃんと勉強して救急法とかの知識があるんがよ、だから状態をすぐに判断できる、適当に見てマゴマゴ判断してきたお前とは違うんだよ!」


 奏はとても良い子である。普段は温厚だ。そして他人への気遣いも忘れない。雪華の家での評判も良い。でも、そんな普段はとても温厚な奏は雪華の事ではキレる事が稀にある。今がその時のようだ。


 「ちょっと、奏、いいよ、いいから」


 と雪華は言う。大丈夫、できることは自分がする。そんな思いだ。


 「何が救急法だ、そんなのヒーラーがいれば一発だろ」


 確かに彼の言う通りだ。それでも、雪華はショックを受けてしまう。


 当たり前の事だ。回復スキルがある方がいいに決まっている。それは持たない人間にとっては超えられない壁で、そして、行き止まりの思考となる。


 それでもスキルの無い雪華にとって、何が何でも役に立ちたいと努力してきた。


 幸い、父に言えば大抵の事はお金を出してもらえるから、今はまだ年齢的にも受けられないような試験の講習会に参加させてもらえる。


 でも、そんな努力も苦労も全てはスキルがあれば、必要の無い事なのかもしれない。


 確かにこの短髪な男の子の言う通りだと雪華は思う。


 それでも、雪華にとって、医学書を読んで調べる行為はとても有益で誰かを助けられると思うとつい力が入ってしまう。


 興味本位のせいということもあるが、今では概ね市販の書籍は読みつくしてしまい、現在の愛読書は、医大などで使用する教科書の類を父に頼んで手にいれてもらっていた。


 おかげで、今の雪華の頭の中は、どこかの医大生などよりも豊富な知識が詰まっている。もちろん、本人にそんな自覚はない。あくまでも趣味の一環としてやっていることなので、そう胸を張って言えることでもない雪華だった。 


 それでも、それをそばで見てる奏にとって、その行動は、ダンジョンに入るためのたゆまない努力であって、おそらく雪華にしか出来ないことだと尊敬の気持ちを持った。そして、思うのがスキルは確かに大事かもしれないが、それは全てではない。


 剣を志す奏は、知っている。


 かつて、このダンジョンができてから以降、現在に至るまで、最強と謳われた剣士は、『ノービス』だと伝えられている。


 それは、ダンジョン内で剣を振るう者で、ある程度の知識やスキルをもつ物、特に連綿とこのダンジョンの歴史を綴っているギルド関係者なら誰でも知ってる周知の事実だ。


 『殲滅(せんめつ)凶歌(きょうか)


 その者の前に立つことは、人であれ、モンスターであれ、ただ悔いることしかできなかったと伝えられる。


 北海道ダンジョンに伝わる1つの伝説で、現在のこのダンジョンに剣を扱うノービスが多いのはそんな理由からと言われている。


 ちなみに深階層のどこかには、その者が残したと言われる装備一式が眠っていると伝えられている。そして皮肉なことに、雪華自身も、この伝説伝承に直接触れる機会はそう遠く無い未来にやってくるのである。その存在は人の努力でたどり着ける最高峰の例えでもある。


 そして努力家な雪華だ、可能性は低いものの、これから先スキルが発現するかもしれない。


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