表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/1335

第161【委員長は悪鬼を憂う???】

 それでも、その事件をどこか深刻そうに、そして時折、怪獣映画のラストみたいな話をしてくれる葉山さんは、どうしてか寂しそうに見えた。


 「どんなダンジョンウォーカーなんだろうね? その『悪鬼』って、化け物みたいに呼ばれてどんな気分かな?」


 って言われるから、僕は何も言わずにただ、微笑んで葉山さんを見ていた。


 いや、だって、何を言っても嘘になっちゃうからさ、こうするのが一番だって思ったんだよ。ほら、葉山さんも微笑みかえしてくれてるし、これでいいんだよ。


 そして葉山さんは言うんだよね。


 「そんな悪鬼、一体どんな目的でダンジョンに入っているのかな?」


 唐突に葉山さんが訪ねてきた、それは僕に聞いているって感じじゃなくて、遠くに問いを放っているみたいな感じで、心もここにあらずって感じだった。


 「そんな事わからないよ」


 会った事もない人だから、僕にわかる筈が無いって言う程で行く。貫く。


 そこにダンジョンがあるからって、喜耒さんには言ったけど、今考えてみると、相当恥ずかしい事を言ったよね。あの場だけのことだから、みんな早く忘れるといい。


 「みんなダンジョンには色々なものを求めて入ってくるのよね、お金って人もいるし、純粋に強くなること、って人もいる、将来の就職とかにも有利って人もいるのよね」


 そっか、そんな風に答えると良かったのかな、でも、そんな事、思ってもなかったしな。 


 「でも、そうじゃない人もいるからね」


 葉山さんは少し寂しそうに笑って、


 「もう、ここ、北海道ダンジョンしか自分を受け入れてくれないって、考える人っている、スキルや能力以前に、自分の資質というか体質が解放される気分」


 そうか、葉山さんも他の人とはダンジョンに入る目的とか求めている物とかが他の人とは違うんだね。そして一瞬だけど、このクラスメートの女の子がトンデモなく遠い存在な気がした。一緒に向かい合う形で座ってるのにね、それなのに、大きく距離を感じてしまうんだ。


 「真壁くんは、なんでダンジョンに入っているの?」


 「あんまり考えた事ないなあ」


 ニの轍は踏まないぞ、っと。この場合、先人の過ちじゃなくて自分の行動ってとこがミソだ。


 「真壁くんの場合、ダンジョンを純粋に楽しんでいるって感じがする、ダンジョンそのものが目的って感じ」


 そんな言い方もあるんだな、僕自身、ほとんど葉山さんのいう通り、ダンジョンに行く事自体が目的みたいな物って考えていたから、動機とか目的を問われても、今一つピンと来なかったけど、葉山さんに1つの答えを貰ったみたいで嬉しい僕だったりする。


 「そうかなあ」


 って思わず喜んじゃったりしたら、


 「私とおんなじって言ってるの、それはそれで危ういんだよ」


 って、急に僕の方を向いて、まるで僕の顔というか目を覗きこむように葉山さんは言った。


 ちょっと、顔近い、って言うか、かなりドキッとしたんだけど、すぐに離れて、


 「で、真壁くんはこれからどうするの? 良かったら一緒に行く? 浅階層もそんなだし、危険じゃないかな?」


 「今日は課題多いし、明日から中階層だから、準備な日かな」


 「そっか、残念、じゃあ私、ダンジョン行くから、帰るね」


 「あれ、今日は課題多いよ、大丈夫?」


 「うん、今終わったから、ダンジョンから帰って予習をちょっとやったら今日は勉強お終いだよ」


 え? マジ? 今、やってたのが課題ですか? 真面目にあの量を? 僕なんかと話しながら、こんな短時間で? いいなあ、僕も欲しいなあ、そのスキル。


 「じゃあね、真壁くん、また明日」


 と委員長な葉山さんは帰って行った。


 その後ろを見送りながら、僕はその時、ダンジョンウォーカーってものについて、あの時、よくもわからなくて発言していたなあ、って思ったよ。


 ただのダンジョンウォーカーってのもきっと、人それぞれあるんだろうなあ、って考えてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ