第160【話盛ってない?? 大盛だよ!】
「え? 真壁くん、同じダンジョンウォーカーで、同じ学校の喜耒さん知らないの? 同級生だよ、冒険者で学校とか行ってない椎名さんの方はともかく、喜耒さんって、結構な有名人だよ、スカウト組だし、ほら、私同期だし」
おおっと、意外な関係性が。というか喜耒さんって同級生だったのか。全然気がつかなかったよ。
「そうだね、喜耒さんってギルド関係の仕事忙しいし、学校とかもあんまり来ないからね、それで成績上位者なんだから、すごい人だよね、さすが幹部候補生と言うかなんというかだよ」
まあ、その辺は、葉山さんも常に1、2位って話だから、人の事は言えないと思うけど、ダンジョンウォーカーの上級者って、頭のいい人が多い気がする。あまり知られてないかもだけど、それもスキルの一種なのかも知れない。
「でね、ここも、かなりやばい情報なんだけど、なんでも、モンスターの召喚に成功して、エルダー級とか呼び出して大暴れしたって話だよ、その悪鬼って人」
なんか、所々に自然な流れで誤解という真実の改竄が見えるけど、確かに人から見たら、そう見えないこともない訳じゃあないよね、って心当たりが多すぎて、変な汗出てきた。
「最後はあの、愚王と一騎打ちだって、そりゃあもう凄い戦いで、これは喜来さん以外に聞いた話だけど、最終的に、あのバカ強い愚王と賢王の喜来さん……、あ、これは知ってるよね、ギルドの情報でも出てるから、喜耒さん、王様なんだよ、うちの学年に王様がいるのってすごいよね」
まぶしい、本当に、大事なところをすっぽり抜かして僕にダンジョンで今、どんな話が舞飛んでいるかを、笑顔で教えてくれる葉山さんが眩しすぎるよ。
「ほんとうに大丈夫? すごい汗だよ」
ってハンカチを取り出して、僕の頬を拭ってくれる。なんかいい匂いだね、さすが委員長だよ。本当に誰にでも優しい、で、その優しさが今は僕を追い詰めてくれている。
「へ、へえ、喜耒さんと仲良しさんなんだね」
「んーん、違うよ、でも、情報交換するくらいの仲ね、その喜来さんが、全く歯が立たない相手なんだって、その悪鬼、もう『ほっといたら死ぬ』くらいの勢いで落ち込んでたから喜耒さん」
「へー」
僕、謝ったほうがいいんだろうか? 喜耒さんに。
「彼女が言うには、仲間と話しながら、喜耒さん自身には全く興味がなさそうに、ヘラヘラしながら、完全にあしらわれたって、あの彼女が『殺してやりたい』って言ってたのはビックリだよ」
しばらく近寄らないようにしよう。ん、決めた。喜耒さんには近づかない。
「でね、その悪鬼なんだけど、『信者』とか 『信徒』がこのダンジョンにすでにものすごい数がいるみたいで、すでにギルドの一部とか、どこかの道場が侵食されていて、すでに大きな勢力になってるって、すごいよね、深階層のいろいろな組織も今大騒ぎになってるよ、その悪鬼の信者がいないか粛清とか開始した組織もあるみたいね」
なんか葉山さん嬉しそうだ。
「それでね、なんでも、信者の中には結構年上の愛人とかもいちゃって、かなり貢がせているんだって、キャー、だよね」
僕の方がキャーだよ。
どうして、何が、こうなってそういう話になってるかな、多分、冴木さんのことだと思うけど、どうしてもって言うから受け取ったけど、確かにマテリアルブレードは高価そうだけど、僕の銘とか入っちゃってるけど。ああ確かにそりゃあ貢がれているって言えば言えないこともないなあ。やっぱり感謝はしてるけど、今後は控えようと思う僕だ。
「これは違う人から聞いた話なんだけど、ダンジョンからエルダーモンスターを出したくないって言うギルドの王様、喜来さんと、ダンジョンの中で、ダークファクトって噂の利害が合致すればモンスターですら守るって言われてる愚王がね、その悪鬼の前に同盟を組んで、漸く退けたみたい、二人の共闘でも傷をつけるのがやっとだったんだって」
「へ、へぇー……」
うん、まあ、内容とか細かいところはともかく、形の上ではだいたいあってる。クソ野郎さんが投げた槍を喜来さんが弾きそこなって、最終的に僕に当たっていうなら、遠く離れた外から見ればそう見れないこともないね。