第156話【ラミアさん騒動、その後の話】
あれから色々あった。
あのラミアさんを巡る大騒ぎは、何が原因で誰が悪いか、ってのが有耶無耶になった感じで、僕の腕が千切れるくらいの大怪我も、ギルドの保健室で嘘みたいに治って、ギルド最強のヒーラーである、斎藤 和子さん。
シリカさんじゃないよ、同姓同名な、真希さん曰く、愛称『カズ』ちゃんに直してもらった。ちなみに、ギルドには斉藤 和子さんって、もう1人いるらしい。真希さん曰く、北海道には一番多い女の人の姓名なんだってさ、ああ、そうですか、って感じなんだけど、そのカズちゃん、結構気さくな人で、
「無茶したなあ狂王、痛みはうまくごまかしているみたいだから寝てられただろ?、腕の断面も綺麗に処理されてたから、簡単にサクッと直しといたよ」
目が覚めたら知らない人がいてビックリだったけど、角田さんと、終始心配そうにオロオロしている春夏さんがいたので安心した。
本当に、あれだけの怪我をしていたのに、すぐに起きれて、体も何事もなかったように正常というか、本当に傷跡もなく、腕が繋がって、きちんと動いた時は、思わず「おお」とか言っちゃって。
ヒーラーなカズちゃん曰く「木っ端微塵になっても生き返らせてやるから、髪の毛一本になっても諦めんな」って、髪の毛だけになって、どうやって踏ん張ればいいのか、皆目見当もつかない僕だけど、ひとまず「よろしくお願いします」とか適当に言っちゃって、その後何もなく今回の事を色々と聞かれるかな、って覚悟してたんだけど、あっさり解放されて、家についた頃には、もう殆ど疲れ切っていて、ばたんキューな感じで物凄い深い睡眠に落ちた。
ちなみに、春夏さんは家について寝るまで、ずっと付き添ってくれてたんだって、母さんが言ってた。ほぼほぼ覚えていないんだけど、春夏さんもそんな事言わないで黙ってるから、気がつかなかったよ。お礼をしないとね。
とは思いつつあれからすでに2週間が過ぎてしまっていて、学校とかも新しい学年とか始まっていて、僕も無事3年生になったんだけどさ、光陰矢の如しを体感しつつ春夏さんに感謝の気持ちはあるんだけど、こっちも有耶無耶になりそうな感じ。
「ダンジョンお疲れ様、いよいよ中階層だね、真壁くん」
っていうのは、中学校3年になっても、同じクラスで、同じく委員長になった葉山さん。もちろん、今回の一連の事件を知っている訳ではない。ちなみにこの『ダンジョンお疲れ様』は、ダンジョンウォーカー同士の挨拶になっているみたいなので、
「ダンジョンお疲れ」
と僕も返しておく。
どこかふざけた挨拶に聞こえるかもしれないけど、これって、深階層あたりだと、人の姿をしてるモンスターとかもいるみたいで、こういったカンタンな挨拶のやり取りが相手を見定めるのに有効な手段って場合もあって、割とガチな挨拶として採用されているらしい。ギルドも推奨しているよ。やっぱり、挨拶は基本だよね。
いまはHRも終わった放課後で教室、さて帰ろうとした時に、葉山さんに呼び止められたんだ。僕の横の机に座って、さっきから何かを書いている。もちろん夢中でってほどもなく僕に話しかけて来たから、何かのついでみたいにカリカリとしている。
と、いうわけで葉山さんはまた同じクラスなんだけど、残念、春夏さんとは違うクラスだった。
この人もダンジョンウォーカーで、スカウト組で、深階層に行っている人で、同じダンジョンウォーカー同士なんだけど、僕よりもダンジョン経験は豊富で長い、所謂ベテラン組さんだ。
よって、ダンジョンウォーカー同士にも関わらず、接点は学校くらいしかない。まあ挨拶程度の中って感じかな、色々絡んできてくれるのは、春夏さん以外、女の子がまるで相手にしてくれない僕にとっては、一種の清涼剤みたいなものかな。
今回の騒ぎでも、ギルドから、事件の原因ともいえる、深階層への調査を依頼されてて、なんでも、僕が戦ってた、『黒の猟団』の本体組織と渡り合ってららしんだ。
話によると、その本体ってのは、おおむね女子らしんだよね。