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第12話【ゴブリン鍋】


 うあ、なんだこれ?


 って思いつつ、春夏さんを見ると、春夏さんは心配してるのもあるだろうけど、その中に、僕をジッと見つめる観察する目は、僕の目を通して、僕の中を覗き込んでるみたいに、実際に僕の体の隅々まで春夏さんの視線が届いているって気がしたんだ。


 多分、これは気のせいではない、ない筈。


 きっと、普通ならゾッとする。


 だって、体の中身を隅々まで、違うな、それ以上を見られてる。


 これは気のせいでは無くて、実際にそうされてる。


 その手で僕を固定して、じっくりと僕を見てる。


 普通は怖いって思うよな、身動きみできず、こんな視線に晒されたら、でも僕はそうは思わないんだよ。


 いや、だって春夏さんだからさ。


 これ、全部、僕の為に行われている事って知ってるから、だから全然良いんだ。


 どっちかって言うと、春夏さんが安心するなら、もっと見てよ、ってまるで心の露出狂みたいな、おかしな感覚になる。もちろんそんな趣味は僕には無いよ。


 でも、ここは別、そして春夏さんは例外なんだ。


 春夏さんだからそう思うんだよ。


 そして、春夏さんは、ホッとした様に微笑んで、


 「よかった、もう大丈夫みたい」


 って安心した様に言うんだ。


 そして、その後、あの時邪魔していた人達の正体ってのを僕は知った。


 思わず声に出てしまって、


 「ええ! あの人達、春夏さんの知り合いなの??」


 って言ってしまった。


 「うん、そうなの、同じ『道場』の人達なの」


 って春夏さんは言った。


 話によると、なんでも春夏さんて、彼女の父親と母親の影響もあって、親が師範代を努める道場に小さい頃から通っていて、あの邪魔して来たイケメン長身な乱暴者さんも、同じ道場の仲間なのだそうだ。


 反対して来た理由は、春夏さん、言葉をぼやかしていろいろ話ていたけど、どうも春夏さんをダンジョンに入れたくなかったみたいらしい。


 理由はわかるよ。


 特にスポーツとか、真剣に人生を描けてやっている人なら、ダンジョンに入らないって言うのは大きな理由があるからね。、


 それはさ、大きな団体や特に国体とか、もっと言えばオリンピックとかさ、そう言う競技に出るなら、ダンジョンに入ってはいけないんだ。


 特に『スキル』が発現してしまった人も、これらの公共競技には参加できなくなるらしいんだ、なんて言ったかなあ、ドロップアウトみたいな言葉で表現されるんだけど、ともかく、ダンジョンが青少年に与える影響ってのが、スポーツの公共性に欠けてしまうから、厳しい団体だと、一度てもダンジョンに入ってしまうと、その競技に参加は認められないって話らしい。


 まあ、確かに、深階層くらいに到達、常連なダンジョンウォーカーなら、『身体硬質化」とか、『運動能力強化』なんてものが身に付くらしいから。


 まあ、そうだよね。一般のダンジョンウォーカーだって、スキル無くったって、巨人やドラゴン相手にやり合ってるんだからね。そのくらいにはなるよね。


 素手でモンスター相手にやり合う団体とかもいるらしいし、確かにそんなのと、普通の競技の上での格闘とか戦ったら結果なんて目に見えてる。


 ちなみに深階層にいるダンジョンウォーカーともなると、ある一定の強さを突破してしまったら、モンスター相手には物足りなくなって、ダンジョンウォーカー同士の抗争とか、闘争も多くなるんだって。


 もちろん、みんなダンジョンウォーカーだから、普通に人間で、話し合いとかも可能で、むしろ、きちんとした理由も無く襲いかかって来ることはないと言われてるけど、確か、深階層の組織で、絶対に目を合わせるな、って言われてるところもあるらしいんだうよね、名前は『怒羅欣』これは、階層を突き抜けて、ダンジョンに入った事のない僕でも名前は知ってる。


 ともかくかなりイカれた連中らしい。


 あんまり近寄りたく無いよね。


 それを含めて考えると、北海道ダンジョンって、日々、『超人』を生み出してる施設とも言えるかもしれない。


 だから僕も、深階層に到達するその日まで、他のダンジョンウォーカー相手に上手く加減して行けるかどうか不安にはなるんだ。


 深階層くらいならもう加減とかはいらないだろうって考えてる。


 中階層くらいから、もうダンジョンウォーカーの抗争って始まるらしいから。この辺は気をつけ無いとだよ。


 そんな事を考えてる僕らの前にはすっかり『ゴブリン鍋』の準備が整っていた。


 「さあ、みんなで食べましょう」


 って母さんに言われて箸を取って、さて、食べようかな、って思っってると、春夏さんが、箸に手をつけてない。


 「どうしたの?」


 って聞いてみると、


 「秋くん、これ、『ゴブリン』????」


 って、怯える様に聞いて来るんだよ。


 ああ、北海道あるあるだね。


 確かにダンジョンにゴブリンは存在してるし、北海道の魚介類おグロい方が美味しい傾向にあるからね、ドンコとか。だから春夏さんが誤解してしまうのも無理はないんだよね。


 「あ、大丈夫、ゴブリンは入ってないよ」


 って教える僕、春夏さんは、最近、北海道に帰って来たって言ってたから、そうだね、本州なら、あの素材は手に入らないからね、ダンジョンあって、ゴブリンがいる北海道ならではの素材だから、勘違いするのも無理はない。


 「ジンギスカン鍋だって、ジンギスカンが入ってる訳じゃないでしょ? 石狩鍋だって、鍋の中に石狩市は無いよ、だから安心して」


 と言うと、まだ不安そうに、


 「うん」


 って言う。


 仕方ないから、僕は、その『ゴブリン鍋』から、良く煮えた豚肉と白菜を小鉢に取ってから、


 「ほら」


 って言ってから口に入れた。


 ああ、美味しいなあ……。


 本当、この味、まあ、今日が例えどんな1日だったとしても、なんかもう、全てが許される味だよ。


 で、僕に続いて春夏さんも一口、


 「んーーーーーー!!」


 喜びに表現できない声に凄い良い笑顔。


 明日、また頑張ろう。

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