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第155話【まあ、大団円】

 なんか、どんどん何も考えられなくなっていく。


 多分、体の中から血が失われて言ってるんだね、ほんと、ものすごい眠い。眠くて眠くて、もう、何も感じないんのが幸いだなあ、消え掛ける意識に誰かが囁く、


 「血液の損出を止めます」


 ゆっくりと倒れて行く僕の周りに、月が。


 「何これ?」


 「『足元に月』重力操作による大気圧の調整によって、損出した腕の箇所からの出血を止めます、痛いですよ」


 ほんと、真面目に腕じゃなくて、心臓のあたり、胸が破裂するくらいの痛み僕はのたうつんだけど、体は中空、水面から1mくらいの高さで固定されている。


 痛いんだけど、なんか、僕、元気というか今まで体を襲ってくる喪失感が全くなくなって、精神状態も普通に戻っている気がする。


 でも悲鳴をあげてしまうほど痛いけど、


 「『宙に氷塊』によって、傷を凍結します」


 腕が、というか右肩から下が凍りついてしまう。


 「ウワアア!」なんて情けない声を出してしまう僕だよ。


 でも痛い、本当に痛いけど、やがて冷やされ痛みも鈍ってくる。胸の痛みも無くなっていた。


 で、今度は寒い。


 普通に寒いんじゃあなくて、体の中から寒さがやってくるような、そんな今までに体験

したことがない凍える感じが怖い。


 でも、まあ、瀕死というか、死にかけから、インフルエンザで42℃の熱を出して寝ているくらいには元気になったって感じかな。


 「今のは魔法なんですか?」


 とい息も絶え絶えに尋ねる僕。なんでこんな事を聞いているんだろ?


 「私は人に対して初歩的な回復魔法しか使えません、創造側の奇跡を任意で出現させています、残念ながら、現時点でのあなたの壊滅率は30%、損失率75%を超えていました、この場に回復の手段はありませんので、このような強引な手段を取らせていただきました」


 「そうなんですか、ありがとうございます」


 本当に、朦朧とする意識の中で、お姉さんの言ってる言葉の意味すらわからなけど、助けていただいているっていう現状において、低意識下でも、そんな言葉が出ちゃう。


 すると、驚くべきことに、お姉さん、


 「いいえ、どういたしまして」


 って言って微笑んだんだよ。本当にニコって。へえ、こんな表情もあるんだ。


 この笑顔って、どっかで見た事あるなあ、なんて考えてたらさ、そうだね、母さんが、僕と遊んでくれた友達に向ける笑顔に見えたんだよね、今、こんな状態なんで、どうしてか子供のころの僕が母さんと一緒にいるっていうところを思い出して、なんだろう、ちょっと安心しちゃったよ。


 「おい!」


 っていうのはあのクソ野郎さん。なんかものすごい怒ってる。ってか取り乱している?


 「なんで、こいつを助けた? ってか、なんでお前助けられているんだよ!」


 いや、なんでって言われても、表情は崩さないけど優しいお姉さんじゃん。


 「今日で2回目ですよね、こうして助けてもらえたのは?」


 そうだよ、あの時、地下歩行空間で怪我をお姉さんに直してもらったんだよな、確か。


 「おいおいオイ、冗談だろ? 今のこいつに『自我』なんてないんだぞ、俺以外の人間の言う事どころか、存在だって認めてないんだ、それが…」


 て言ってから、なんか笑って、


 「やっぱ、お前、おもしれーよ、マー坊」


 って言ってから、


 「帰るぞアモン、そいつはもう大丈夫だ」


 最後にお姉さんは僕に告げるんだ。


 「あなたは、()()()()()()()()()()()()()()を保持して、最下層に向かってください、すでに手段は講じました、彼女を任せます」


 僕の横には僕が守ったギルドの女の子が、いた。


 凄い真剣な表情。


 そっか、そうだね、任せたよ。


 そして、クソ野郎さんのお姉さんは、いつのまにか僕の隣にいた春夏さんに向かって、


 「支援は可です、代行もしくは著しい介助は不可です、気をつけてください」


 そんなことを告げた。


 もちろん、大丈夫だよ、って立とうとする僕に、


 「動くな、アッキー、今はそれどころじゃ無いべさ、あ、手が千切れたべ、誰か持つべさ」


 って真希さんが担いでくれる。


 「はい!」


 あ、さっきの救護班の女の子が、僕の千切れた手を持ってくれてるみたい。見てないけど、怖くて見れないけど、痛みが感じられないのが幸いだよ。


 ひとまず一連のラミアさんへの大騒ぎはこうしてうまい具合にグダグタになって終了したってことだね。まあ、なんかよかったよ。


 これにて、ノーサイドだね。


 僕も、腕を吹き飛ばされた甲斐があったってもんだよ。


 ひとまず、これでもう気絶してもいい?


 そろそろ限界みたい。


 いいんだったら、もう、意識失うね。


 じゃあ、みんな、あとは僕を頼んだよ。


 目が閉じる前に、のぞき込まれた心配する春夏さんの一瞬だけ見せてくれた笑顔。


 「上手にできたね、秋くん」


 「うん、まあ、約束だからね」


 それは、互いに言葉だったのか、それとも……。


 意識が白く濁って来る。


 僕の意識もここまでだった。


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