第148話【さて、なんとか終戦させないと…‥】
あれ?
真希さん、どこ行ったんだろ?
「なんだ、ズー子、寝ちゃったね、まあ無理もないしょ」
「うわ! 出た!」
いつの間にか隣にいた。
お願いだから、目にも留まらぬ速度とか、気配を消すとか止めようよ、心臓に悪いから、本当にびっくりした。
「出たとは失礼っしょ、角田、あっちの救護班の方に運んでおけよ、そーっとな」
って的確な指示をくれた、ああ、あの混戦状態の後ろ側のさらに後ろにいる人たちが救護班なんだね。
「なんで俺が」
ってブツブツ言う角田さん。
さして、重いものを持っている雰囲気でもないんだけど、ごめん、そこは我慢して。
真希さんに渡しておきたいところだけど、真希さんだって、一応は形の上では女の子なわけだし、ここは男として角田さんが頑張ろうよ。
「形の上?」
ギロって睨まれた、ああ、口が滑ったと言うより、思う心が止められない。
と言うか、心を覗いてのクレームはそろそろやめない?
止めようがないもの。スッと出てしまうもの。これって重大なプライバシーの侵害にあたるんじゃあないかな。
まあ、ひとまず、これにて最初の目的、『シリカさんをギルド本隊に届けよう』っていうのは完遂された訳だし、ラミアさんも深階層に帰ったし、まあめでたしめでたしじゃあないかな。
あそこで多勢に無勢だけど、まあまあいい戦いをしているクソ野郎さんは多分、『討伐対象』って言われていたみたいだし、自己責任みたいだし、このまま放っておいてもいい感じがする。
じゃあ、僕らは逃げようかな、って思うんだけど、そのためには、彼らが戦っているところをうまい具合にすり抜けて、この鏡海の間にたったひとつある出口を、まあシリカさんが深階層に続くテレポーター作っちゃった訳だけど、まさか、そっちに行くわかにも行かないから、やっぱあっちに行くしかんないんだよなあ。
気が重い、って言うか、なんか絡まれそうだから、なるべくスルーしていきたいけど、こればっかりは、こっちの都合だけってわけにも行かないからなあ。
「僕、スッと帰ってもいいですよね」
念のために、ギルドの幹部がここにいるから聞いてみた。
「無理だべさ、この場に居たって時間の問題で巻き込まれるべさ、アッキーはさ、この混乱の元凶で張本人だべさ」
って当たり前のように言われた。
ですよね……。
そもそも僕らが原因を作ったようなものだもんね。と言うか騒ぎの中心は本来僕らだ。
でもまあ、そんな僕らの存在がなくなってしまうほど、あのクソ野郎さんは、当たり前のようにギルドに追われる人ってことで、なんとか助かっているんだよね、僕達。
ここまでギルドに総攻撃を仕掛けられるって、本当にあの人、一体何をしでかしたんだろうか?
「じゃあどうしよう」
「ギルドの目的、アッキー達の立場、今の現状を鑑みればわかるべ、あのクソ野郎のことは無くしてしまう方向で考えてみるべさ」
と、なると、どっちかに加担して、あの戦いをひとまず収める必要があるってことだよね。
ともすると、それはもう選択の余地なく、僕は、駆け出す。
「あ、秋くん」
と追走してくる春夏さんにマテリアルブレードを渡される。ああ、そうかシリカさんに夕張メロンピュアセリーを食べさせた時渡したままだったね。
「手伝う?」
あ、春夏さんがいてくれた方がいいな。
「うん、一騎打ちするから、邪魔が入らないようにしてもらえると助かる」
「わかった」
「秋さん、弟がガチに危険になると姉が出ます、そうなると厄介ですよ」
って角田さんが教えてくれる。
そうか、クソ野郎さんも結構な厄介な人だって思ってるけど、お姉さんはそれ以上か、角田さんが積極的に参加してこないのはその辺にあるみたいだ。