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第145話【糖質全開チャージ完了!】

 僕たちに振る舞ったマルセイバターサンドは糖質というより脂質だから、今回は結構大きな力を使うって事だんだね。


 でも、


 「スプーンがないから食べれないのです」


 ってシリカさんは悲しそうにいう。


 さて、現状、戦線はクソ野郎さんとギルドの人たち、こちらからはかなり遠ざかってくれた。


 事を成すなら今だ。


 時間はそんなになさそうだ、まして、スプーンを取りに行く時間は皆無だ。


 まあ、仕方ないね。


 「シリカさん、スプーン無しでいこう」


 「でも、ダメ、それは危険です」

 確かにね、僕のやろうとしていることは、公共の倫理に反することかもしれない。


 特に、シリカさんのような色々と拙い人にはなおさらだよね。


 でも、だからと言って迷っている暇はない、ラミアさんが、って思ってラミアさんを見ると、どういうことか若干さっきよりは血色がいいというか、元気になってる?


 自然治癒なのかな、やっぱモンスターだからかな。って思っていたら、


 ラミアさんは、ずっと遠くの方で、走り回っているクソ野郎さんのお姉さんを見て微笑んでいた。知り合いなんだろうか?


 まあ、良いや、ともかく状況は明るくなっているうちにちゃっちゃと済まそうと思う。 


 「春夏さん、ちょっと良い?」


 と近くに春夏さんを呼んで、「ちょっとこれ持ってて」


 と僕のスーパーな切れ味を持つマテリアルソードを持ってもらう。


 で、


 「シリカさん、それ貸して」


 と夕張メロンピュアゼリーをもらって、「切って」と手のひらに逆さに乗せたソレの底のへりの部分をを指差し言った。


 僕の迫力に押されて、春夏さんは、ただうなづいて切ろうとするけど、「なるべく小さい穴で」とさらに僕は注文をして、彼女は慎重な面持ちで実行してくれた。


 「ダメです、丸呑みは危険です、気管に入ります!! 死にます! ここまで育つのに15年かかりました!」


 最後のセリフの意味がわからないけど、シリカさんが抵抗するので仕方なく逃げようとする彼女の肩を抱いてホールドし僕は言う。


 「大丈夫だから、僕を信じて口を開けて!」


 涙目のシリカさんは、一瞬僕の手というか、腕の中から逃れようとするけど、僕の本気の目を見て、その小さな口を開けてくれる。


 「じゃあ、行くよ」


 僕は、シリカさんの口にヘリに穴を開けてもらった、夕張メロンピュアゼリーのその切れた部分だけを入れて、静かに握る。僕の手によって加えられた圧力は、その開けられた小さな切れ目から、夕張メロンの天然果肉の粒を含む液状になって、シリカさんの口の中に流れ込んでゆく。


 「んんー!」


 歓喜の声を口を閉じたまま出したのだと思う。芳醇な夕張メロンのそのままの甘みに感動しているのか、この方法に驚いたのか、シリカさんの目は力強く輝きを取り戻す。


 一度手を止め、僕は確認する。


 「飲んだ?」


 頷くシリカさん。再び力を加えて夕張メロンピュアゼリーをシリカさんの口へと押し出す僕。量を間違うと喉を詰まらせてしまうからね、慎重に慎重に。


 ギルドの人たちとクソ野郎さんの戦う、この鏡海の間で、まるで赤ちゃんに流動食を与えるような、例えるならそんな慎重な作業が続けられた。あ、物の例えのつもりだったけど例えてないね、流動食ってのはまんまかもだね。


 ほんと、僕何やってるんだろ、考えたら負けの境地だよ、自分のやっていることをなるべく客観的に考えないようにするのに必死な僕だ。


 2つ目からは、「あーん」って口を開けているシリカさんだよ、すっかり慣れて、3つ目を完食すると、


 「完了を宣言します」


 と言ってから、


 「私は伝えたい、推進します、と株式会社『ホリ』に進言します、この食べ方、そして広めてゆくことでしょう、スプーンにはもう頼らないということを」


 夕張メロンピュアゼリーの製造元に手紙でも書くといいよ、採用はされないと思うけど。


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