第141話【修羅場をかき回す者達】
今気がついたんだけど、なんか僕の体、端々が凍りついてる。瞬時に凍りついたんだ、これ、多分、これから僕を真希さん、守っていたんだと思う。真希さんと僕のいたとこを中心に遠い所が凍っているからね、もっとも、体にはダメージはない、盾の一部だったり、服の裾だったりだね。
それにしても、なにがどうなって真希さん、この攻撃を砕いたんだろう? なんか、一瞬、ピカッとして、ドドンって感じだったからよくわからなかったよ。
「秋さん、そいつも、それで十分力を抑えているつもりですから、一応は守ってくれているみたいだけど気をつけて、間違えてあたりどころが悪くなくても即死できますよ。一応、この階層では、拳は握らない、10%の力で対応するってのがそいつの心情らしいです、あと、『かめはめ波』的な何かを打ちますから、気をつけて」
いやだ、何、それ、どこのスーパーサイヤ人?
「角田、ネタ晒すなよな、アッキー怖がるべ」
と言ってから、
「大丈夫、気円斬は打てないから、したっけ『魔貫光殺砲』的な何かなら頑張ればなんとか」
いやだ、何、それ、どこのスーパーナメック星人?
一応さ、僕もなんか、今回の一連の騒動でなんとなくやっていけるなあ、くらいの強さを自身に証明できたんだけどさ、この真希さんって、なんだろうか、基軸が違うっているか、はなっから規格外の匂いがするんだよね。絶対に敵にしてはいけない人だと思う。
そんな真希さんが、
「まあ、アッキー、まだ言いたい事はあるけど、したっけお客さんが来たべ」
こっちが本命って言わんばかりに、真希さんが言う。
そして、片手を伸ばした瞬間にその手のひらから、何か出た。真面目にかめはめ波的なやつが出て、それはこの部屋の出口に向かい、そして弾ける。
弾けて、大量に舞う水の滴りの中で、どこかで聞いた声が響いた。
「おいおいおいおい、みんな残ってんじゃねーか、1人くらい倒れてろよ」
どこかで聞いた事がある、そんな声が『鏡界の海』に響く。
「必死に駆け上って来やがって、うまくいけばよ、どっちかの能力を横奪しようと思っていたのによ」
と、その本音も隠さずに言った。
そして、僕に向かって、
「おお、久しぶりだな、これで、三度目だな、お前、『狂王』なんだろ? 改めて初めましてか? 俺は『愚王』だ、そっちの『賢王』の嬢ちゃんは初見だな」
凍てつくような青い鎧、そして、同系色のマントで身を包んで、彼は歩いて僕らに近寄って来る。その背後にはまるで影のように従える深緑のローブを纏う女の人。
「なあ、狂った王様さんよ」
と僕に話しかけて来る。
「俺と組まないか? 今の現状を見ると、やり合っていたろ、ギルドと、いいねお前、いいわ、そうやって混乱と狂気をどんどん呼んでやろうや、それがこのダンジョンの正しい形だ、そう思うだろ?」
僕は、その言葉よりも彼の持っている槍に警戒した。
なんだろう、とてつも無くヤバイ感じがした。普通の槍っぽいんだけど、腕に鎖のストラップって感じで、槍の石突あたりに繋がれたそれは、長さが邪魔になるのかその腕に巻かれている。多分、あれ脱落防止ってわけじゃないから、武器としての能力を秘めているんだと思う。その使い方を少し想像してしまう僕だったりする。