第138話【工藤真希強襲! 真壁秋は逃げ出したい】
この前も説明したと思うけど、よく言われる事なんだけど、ダンジョンに置いて、剣とか武器を使って戦う俗に言うとことの近接戦闘距離を『友人距離』、概ね、戦闘はこの距離で行われることが多いんだけどさ、もちろん魔法系のスキルの人って、この外側にいることが多くて、ロングレンジなさっきまでの角田さんと黒い魔女の人がそうだね、で、ごく少数なんだけど、直接戦闘において、武器を使わない人たちがいる。
この札幌ダンジョンの中では『怒羅欣』とか有名だよ、そんな武闘家な人たちがいる。
彼らのモットーは『鍛え抜かれた肉体こそ、最強にして無二の武器』とか言っちゃってて、全く武器や防具を装備する事なく、ガチに素手でモンスターに対峙している。
主な攻撃の仕方は、殴る蹴る投げる締める、体のみで打ちかますだそうだよ。
その歴史は古くてダンジョン発見当初にはすでにこの形というか組織は設立されていたんだって。
って言うか、一般格闘技、特にフルコン(何をしてもどこを攻撃してもOKな人達)が対人格闘技に飽き足らず、さらなる研鑽と戦いを求めて、この北海道ダンジョンにやって来たのが始まりで、源流と言うか骨幹はは『北海道ヒグマの会』って言う、ヒグマと素手で戦おう、って言うイかれた少数団体、その青年部が元になっているらしいんだ。
『ヒグマの会』の方は僕も2回くらいはあったことがあるけど、そのイカレていながらどこか牧歌的な集団の話は、それはまたの機会にするってことで。
そんな、素手な人たちの推奨する戦闘距離って、本気で『0』レンジ。別名、『恋人の距離』なんて言われているけど、今まさに真希さんと僕って、そのものって感じ。
多分、と言うか絶対にこの人、そのスキルな人なんだな。本気で実感してる。
モンスターとか、敵を素手でボコる人。で、それができる人。
マジに、ここに擬音が付くとしてら『ゴゴゴ…』とか張り付いていそうだもの。
スライムの森の僧侶っぽい姿も、あの狸小路裏商店街の守銭奴装備も仮の姿って事で、多分、今の姿が本当の真希さんて事でいいんだよね。
本当に、まんま武闘家みたいな姿というか、あのクンフーな感じななくて、道着とも違う、なんかもっとスタイリッシュな感じのそれなりに防御とかもありそうな姿、多分、これ、斬撃とか魔法なんかに対抗できる装備なんだろうな、多分、真希さんの真のスキルを十分活かせる姿んなんだと思う。
このスタイルの方がしっくりきているっていうか、生き生きしてる感じだよ。
「アッキー、ちゃんとこっち見るべさ」
って真希さんが全くいつもと変わらない口調で僕に言うんだけど。
「いや、ほら、みんな見てるし、ちょっと距離が近いかなあ、って」
顔を背けて僕は言う。
「で、なんでギルドを敵に回して戦ってるべさ? お姉さんにわかりやすく説明するべさ、ほれ」
なんか脇腹のあたりを小突かれる。
「それは、身を守っているって言うか、何と言うか」
で、真希さん、今度は僕から視線を離して、その怒りというか、それを伴う意識が方々に拡散する。
「お前! 角田この! お前がついていながら何をやってるべさ!」
するといきなり怒鳴られて角田さんは、いつのまにか相当な距離と取っていて何かこっちに向って叫んでいる。