第133話【王位は継承され真壁秋にはファンが集う】
こりゃあ、しのぎ切らないかなあ。って思ってラミアさんを見ると、本当に傷だらけで、この傷のいくつかは僕を守るためについたのだから、僕はここで諦めるわけにはいかないって、改めて思うんだよ。
って思っていたら、そのうちの2人、いや3人が、なんか僕の真横について、僕の顔を見てからにっこり笑って他のギルドの人達と争いだす。
あれ?
これはどんな状況?
「何をしているんですか?」
って喜耒さんも言ってる。
本当に、何をしてるんだろう? なんで味方をしてくれているのかな? 僕の横で僕の為に突然味方になってくれた人達、3人いるんだけど、まったく見覚えとかない。
誰?
さすがにギルドの人達同士でもおかしいと思ったらしくて、全体的に人の動きが止まる。そして、その中の1人が僕にこう告げたんだ。
「すいません、確認できました、真壁 秋ファンクラブ312号です、会員規約第1条第4項に則り、助太刀させていただきます」
他の2人が、「同じく、89号」「同じく、132号」って続いた。
ああ、なんだ、僕のファンの人たちか…。
って、何それ? 真面目にシャレじゃなかったの? え? 僕のファンって、味方を裏切ってまで助けてくれるの? それに、312号って、いつの間にか増えてるじゃん。会員規約ってなに? もう、色々とツッコミが間に合わない。
すると、ひとまず戦いが収まって手の空いた春夏さんが、
「秋くん!」
と僕を呼んで、思わず春夏さんを見る現状の把握が出来ない僕に向かって、
「私、1号だから」
と、本当に、こんな状況の中誇らしげに言う春夏さんだった。
「うん、ああ、そうだね え?」
ってしか返せない。
「うわ、一桁会員だ、カッケー」
「名誉会員の人ですね」
「ファンクラブ1号先輩、チワッス」
って真壁 秋ファンクラブ同士で何か話をしていた。
「なるほど、すでに自分の『兵士』を潜り込んで置かせていたのか」
って麻生さんが、こっちは角田さんと戦いながら、相変わらすの苦虫を潰した感じの表情で言った。
「ということは、角田氏、現時点で、真壁氏に対抗できるのは彼と同型スキルを持つ人間だけということになるわけか」
「ああ、そういうことになるな、でも、その厄介なスキルを持つ『賢王』のお前は俺が抑えている、この場を離れて秋さんに行くと、俺は、中位魔法を集中して放てるぞ、今、お前が抑えている請負頭が自由になるからな、手詰まりだな」
「ふむ、すごいな、恐れ入った、この人数にしてうまく抑えこまれたのは、我々だったという事か、見事に出し抜かれてしまった、そういう事だな」
ごめんなさい、それ、全部、偶然です。
言っていることの半分くらいは意味がわからなかったけど、今のこの状況はたまたまそうなったっていうか、なんか、この麻生さんって、僕らのことをいちいち上方修整してみていてくれるよなあ。
偶に会う、従兄弟の事が大好きな親戚のお兄ちゃんみたいで、戦っていながらこうもポジティブにとらえられるとどうにも親近感が湧いてしまう僕だった。
でも、ちょっと待って、なんか引っかかることを言ったよね。
佐藤さん、だっけ、和子さん、ああ、もうシリカさんでいいや、そのシリカさんについて、僕の知らない事を麻生さんは知ってる。
そしてそれはどうも麻生さん達にとってマズイ事らしい。
体を激しく動かしつつ、ギルドの人たちの攻撃をかわしながら、僕は考えた。
まだ何かあるんだ。僕の知らない何かが、この状況をなんとかできる何かがあるんだ。考えろ考えろ考えろ、僕。