第132話【統制された強きギルド】
そして僕の状況はって言うと、今、春夏さんと喜耒って人が絶賛対決中だった。
しかも、残ったギルドの人たちの一部がやってきているんだけど、全く手が出せない。
「ふむ、2対1では分が悪いか、こっちは20人残れば良い、魔法スキルの低い者は喜耒君の方に回ってくれ」
ここで僕らの方に10名ほどが回ってくる。
それで尚且つ、角田さんと麻生さんは五分の戦いを繰り広げている。
こちらに戦士系の人達が回って来ていると思うと、さすがに状況が不利になってくる。
地味に強いんだよね、この人達、さっきの黒い人は個の強さだとしたら、こっちは隊の強さ。集団で隙間なくグイグイと押してくる。
一応は、今まで専心防御でなんとか状況を繋いで、次の手を考えていたんだけど、いかんせん僕らにとっての最大広域戦力の角田さんが抑えられてしまって、尚且つこちらの方に戦力を回されては、状況はわかりやすく不利だ。
しかも、武器の性質も悪い。
向こうの方の武器、多分、いくつかは状態変化の武器だと思う。
俗に言う、『麻痺』とか『眠り』とかの、触れた相手をそんな状態に落とす武器、使い方が妙なんだよね。しかも、互いが互いの間合いに入らないっていうか、お互いの接点を遠ざけて、順を持って攻撃してくる。同時には来ないんだ。
先に言っておくけど、僕に角田さんの様な鑑定のスキルはないんだけどさ、どうしてそんな事がわかるかっていうと、彼らの武器にはそれが全部書いてあるんだよね。
「触るな、しびれる、危険」とか「眠り注意」とか「部分石化します、危険」とかわかりやすく表示してある。
ギルドの構成員って、多分、『安全第一』なんだな。
この手の武器って効果の隠蔽っていうのが第一なんだと思っていたけど、使う者の安全が優先されるって、なんかとてつもないホワイトな企業を見ているみたい。
そんな安全表示を施された武器なんだけど、それはそれで、数の有利で押して来られているので、ちょっとした切っ掛けで均衡は崩れるのは目に見えている。
向こうはこの数の中、1回当たればいいんだからね。
こっちはさ、ギルドの構成員さん達を葬り去る訳にはいかないから、まあ、それが功を奏して防戦に集中できるのだから、今の状況があるんだけどね。
それでも、手詰まり、時間の問題ってのは変わりないなあ。
正直、もうダメかも、って思っている僕なんだけど、なんとか、あの優しいラミアさんは逃がしたいけど、さすがにこれはって状況なんだよね。でもまあ、体は張るんだけどさ。
それに、ここで、仮にギルドの人たちをなんとか出来たとしても、下から、ギルドの本体がこちらに向かっている以上、ラミアさんを深階層に戻すことは難しいんだ。
この鏡界の海って、袋小路だからさ、最低でも今相手にしている戦力をもう1回なんとかしないといけないってことになる。
「それは大丈夫です、最下層あたりまで行っているんなら、どれほど急いでも帰って来るのに半日はかかりますからね、テレポーターがいるにしても、シリカがこっちにいるから、向こうは無茶な転移魔法は使えません、時間はあります」
って角田さんが僕の心中を察してと言うか読んで答えてくれた。
だよね、さすがにそれは無理だよね、ギルドのお代わりは、って思う。
なんて、思っている側から、まとめて5人くらいが僕に向かってかかってくる。