最終話【その先の、道へ。 北海道】
でも、すごく機嫌はいいんだよなあ、アキシオンさん。
するとさ、そんな事を考えながら、ご飯を食べてる僕にさ、春夏さんが言うんだよ。
「大丈夫だよ秋くん」
って、うん、まあ、心配はしてないけど、これ言われると、もうこれ以上考えなくていいやって気分になって来る。
「アッキー、今日の予定は?」
って真希さんいきなり聞いて来るから、
「うん、超深階層で、リバイヤさん、って人から、ん? りばいあさんだったっけ? いやリバイアさんだったっけな? まあいいや、その竜的な人から調整状が届いてるから、これからみんなで行くんだ、朱鞠内湖、直下だよ」
「挑戦状ではなくて、調整状ね」
って静流が説明してくれる。
「そう、調整状、今度からそのエリアでボスやるから強さのリバイヤさん本人にお願いされたんだよ、最近、新しい階層の出現でさ、それでなくても、強さの調整って難しいからさ」
って言ったら、
「まあ、ここ最近、年齢制限撤廃もしたしな、ダンジョンウォーカーの強さの質とかも上方に伸びあるからなあ、まあ何にせよ、よろしく頼むべ」
って真希さんに言われる。
今のギルドの相談役として、僕らの様なダンジョンの運営側の相談役としても頼りになる存在だ。
「ゲートはどこ使う? 最近は混んでるから、中島公園ゲートでもいいべさ」
って言いながら、しょっぱいなあ、って顔をしつつニシン漬けを食べながら言う真希さんに、薫子さんが。
「本当に、すごい人ですよね、特に4丁目ゲート、スライムの森の拡張と今は中階層まで観光客に開放して、宿泊施設とかあるから、中階層の中部まではお客さんでごった返していますよ」
「紙ゴーレム何万体あっても足りないって、雪華が愚痴ってたなあ」
ってお味噌汁をすすりながら真希さんが言うんだよね。
そうなのさ、大通り公園の観光客の皆さん、毎日が雪まつりとよさこいソーラン祭りがいっぺんに来たみたいな大盛況なのさ。
今、まさに北海道は、観光ダンジョン都市って感じなのさ。
「どうする秋、やっぱり、中島公園から行く?」
って静流に聞かれるけど、僕は、
「いや、市電に乗って、4丁目ゲートから行くよ」
春夏さんがいるからね、二人で市電に乗りたいからね、二人じゃないけど、でも、210形が来るといいなあ。
なんて思いつつ、その後ろでは妹が元気に外に遊びに行った、きっと雪華さんのところだね、何も言ってないから。
さて、ご飯も食べ終わったし、食器を片付け様とすると、母さんが、
「ここはいいわ、みんなと一緒に行ってらっしゃい」
って言われるから、玄関には、もう桃井くんとサーヤさんが来てる、きっとフアナさんはダンジョンで待ってるのかな? って立ち上がって、いつの間にか剣化してソファに置いてあるアキシオンさんを手に取る。
「お? 行くか?」
ってすっかり準備できてる春夏姉が言う。
「妹二人は私が守るからな、気にすんな」
って言うから、
「いやいや春夏さんは僕が守るよ」、何言ってるの?ってなるところに春夏さんが来て、
「秋くんに守ってもらうからいいわ、姉さん」
って断ってる。でも納得いかない春夏姉は僕を睨みつけるけど、本当に同じ顔が二つ並んでるけど、全くの別人に見えるよ。
「真壁秋、こっちも準備完了だ」
っていつの間にか、着替えている、薫子さんに、
「ルートの選定とかできてる? 隊形は? 此花姉妹との合流地点も把握している?」
って、いちいち静流がうるさい。
「お館様、私も準備よしです、各所に秋の木葉の人員の配置も完了しています、何卒御命令を」
って言い出すんだよね。
本当に、静流も蒼さんも、この二人って、僕の為にとかで平気で無茶するから目が離せないよ。だから、
「隊形はともかく、二人とも絶対に見えるところにいてね」
って一応釘は刺しておく。
そして、そんな僕の気持ちとは裏腹に、とっても嬉しそうな蒼さんと静流だよ。
「嫌だな、秋、もう離れないからずっと一緒だよ」
って言う静流に、
「片時もおそばを離れない事をここに誓います」
って顔近い近い、蒼さん、静流もその間に入ろうとしない。
「師匠!」
って大きな声を出して玄関から呼んでくるのは僕の弟子の滝壺さんだね。
で、その横でもじもじしてるのは雨崎さんだ。どっか具合でも悪いのかなあ? って思ってたら、
「師匠がなかなか靡いてくれないので、今は恥じらう乙女を演じてるそうです」
ってしれっとした目で、滝壺さんが雨崎さんを見て言うんだけど、
「どうですか、魔王さん、グッと来ましたか? いい演技ですか?」
って元気に確認して来るから、もう、演技って本人が言ってる時点でダメじゃん。
リバイアさんと、強さの調整をするだけだけど、よく考えて見ると久しぶりのダンジョンでの冒険かな。
みんなに、いいよ、って言ってたら、結構な大所帯になっちゃったけど、まあ、たまにはいいよね。
僕は、準備って言っても最初から、ジャージは着てるし、アキシオンさんは持ったし、これだけだから、スッと出れるよ。
だから、もう行くね。
ああ、一緒に行く人はみんな玄関から外にで始めてる、僕も急がなきゃ。
僕は中に向かって、言うんだ。
みんなに言う。
「じゃあ、行って来ます!」
そして僕は、今日も北海道ダンジョンへ!
<完>