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北海道ダンジョンウォーカーズ(再up版)  作者: 青山 羊里
◆終章 異世界落下編◆
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第154話【いつの日か、アキシオンさんの野望】

 毎日来るよ、ってか毎回来るよ、で、些細な事で母さんと言い合いになるから、波風立てないで欲しいんだよなあ。


 本人は花嫁修行とか言ってる。で、最後は母さんと組み手みたいな事して満足して帰って行くから、誰だ? こんな人をお嫁さんにしようとしている命知らずは、って毎日思う。


 って思ってると、


 「ごめんなさい、それ漬けたの私です」


って恥ずかしそうに薫子さんが手をあげる。


 「え? ルー子かい??」


 って箸からニシン漬け落としてワナワナしてる。


落ちたニシン漬け、すぐに拾って口に入れて、感無量って顔して、


 「そうかい、自分の身の回りも怪しい、あのルー子がねえ……」


 って言いながら、スマホで写真とって、瞬く間に一斉配信している。


 「やめてください、形が、ちょっとこれは失敗したんです、写真をとるならもっと出来のいいやつをお願いします!」


 って真希さんから漬物入れた小鉢を奪おうとしている。もちろん、真希さんが簡単に渡すわけないからもみ合いになってる。割と真剣だよ。


 本当に喧嘩するならよそでやって欲しい。


 ちょっと迷惑そうな、そんな人達を見た目を癒そうかなって、春夏さんを見ると、いつの間にか来ていた静流と蒼さんと楽しそうに何やら会話している。


 何を話してるんだろ? って見てると、僕がこっち見てるって気がついた静流がさ、


 「大丈夫、私たち喧嘩とかしないし、仲良しだから」


 って春夏さんと蒼さんも相槌を打っているから、その辺の心配はしてないんだけど、まあいいか、ってなる。


 今はさ、いいよ。


 でもね、本格的に僕は春夏さんをお嫁さんにしようとするときは、なんとかこの状況を脱出して、二人で逃げようって、最悪、愛の逃避行しようって、そう考えてるよ。


 もちろん、僕の考えなんて、静流にはダダ漏れで、蒼さんの情報力を持ってすれば、どこに隠れても無駄だよね。


 だから最近は、春夏さんと一緒に、静流にも蒼さんにも、ここから逃げる為にはどこに行ったらいいか相談している始末だよ。


 一応、候補としては何軒か上がってる。


 みんなどこかの孤島だね、サンゴ礁とか綺麗だね。


 結局はみんなで行きそう。春夏さんも楽しみにしてるって言ってるから、それはそれでいいのかってなる。


 そして、最近来たばかりの瑠璃さんに関しても、その頃まで予算を作っておきたいか

ら、具体的な日取りと滞在日数を教えてくれと言われてる。


 彼女達、落ち着いたら、また仕事を始めるんだって。


 なんでも、今度は、僕が以前、解体って言うか殲滅した、グローバル企業のCEOとかに就任するんだって。


 「君の嫁と言う立場を説明したら二つ返事だったよ」


 って瑠璃さん笑ってるから、よかったよ、僕が彼女達を散財させて破産に追い込んだ様なものだからね、そんな事くらいでお役に立てて本当に良かった。


 今後は、この北海道を中心にして、人と、人ならざる、つまりは魔物とのもっとよりよく住める、世界を構築して行くんだって。


 まずは異世界の人達と共有する建築や環境を整えて行くって、ユニバーサルデザインっての? よくわからないけど、みんなが幸せになれるならやるといいよ。応援もするからね。


 本当に、何もかも丸く治って良かったよ。


 特に、アキシオンさんとか、摂理さんにもその辺は感謝だね。


 って思う僕に、彼女達はなんの対価も求めないんだよね。


 特にアキシオンさん、僕が何を言っても、


 「現段階では必要ありません、ただ、抑止力として私たちをそばに置いてください」


 くらいしか言わないんだよ。


 まあ、確かにアキシオンさんにしても、摂理さんにしても、かなりデタラメな力で、僕個人が所持していいものではない気がするけど、彼女達曰く、


 「あなたが持っていることで完全に安全を担保できます、普通の人間には手に余るでしょう」


 とか言うんだ。


 まあ、彼女達がいれば、この世界にある軍事力なんて意味はないからね。


 そんな力があるって事が大事って事だよ。


 でも、前みたいに北海道が責められるのは嫌だなあ、って思ってると、今度は、攻める意識が命令として下された場合、それを宣戦布告とみなして、その軍を消滅させるって言ってる。異なる二つの世界の共存が可能な、この稀有な北海道に指一本触らせないって、アキシオンさんは言うんだ。


 だから、僕達は、今も彼女に守られているなあ、って感謝してるよ。


 そんなアキシオンさんから一度変な質問をされた事があるよ。


 内容は、


 「世界によって人は生きている、変化し進化します」


 うん、まあそうだね、きっとそれは今の常識だね。って黙って聞いてると、


 「では、進化した人が、進化の到達点にたどり着いた人は、何をするのでしょうね?」


 って聞いて来たから、「そんなのわかる訳ないじゃん」くらいに言い返したらさ、


 「ですね、生きて、生き延びて、よりよく生きる人がたどり着く先なんて、永久にありはしなくて、世界は偶然にできた生命によって認識され意識を表すものだと考えていました」


 その時のアキシオンさんの顔を僕は今もはっきりと覚えてるよ。


 喜び? 期待? 未だ体験することのない恐怖なんてものが入り混じっている、僕ら人間でも簡単にできそうにない。人以外というか人以上のそんな感情が見えた気がしたんだ。


 そのアキシオンさんが言う。


 「きっと、今度は人が世界を造るんですよ、オーナー、わかりますか? 造り替えるではなく、造り直すでもなく、新たに、今よりももっと優れた世界を創るのです、わかりますか? オーナー」


 「いや、ごめん、全然わからない」


 って言うのが精一杯だった。


 するとアキシオンさんは、まるで小さな女の子みたいにクスクスと笑って、


 「創造の神は手に入った、それを分ける力も……」


 って言ってから、僕に向かって、


 「楽しみですねオーナー、ですが今は今をお幸せに、そして、この問題については、その時に話し合いましょう」


 って言われたきり、その後、この話題は一切出てこない。



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