第151話【戦勝王への謁見】
空から降りてくるドラゴン? 大通り公園の道路には封鎖する勢いで、それ以外の獣もいる感じで、なんだろう、その目が、視線が一斉に僕に向かっているのがわかる。
敵意は無いなあ、だから遭遇感も。
特に大きい魔物になると、その肩と言うか、背中とも言うか頭にも無数の小さな魔物の人が乗っていて、その隙間を縫う様に、その間も、魔物の人たちが、この大通公園を取り囲む様に姿を見せてた。
何か、ブツブツ言うわけでも無く、でも、よさこいソーラン祭りよりも、雪まつりの時よりも多くの人ではなく、それだけの数の魔物な人たちが、この4丁目ゲートのある僕を中心に、取り囲む様にどんどんとその数を増している。
藻岩山からも降りて来た魔物の人もいるみたいで、もしかしたら、ここに異世界な人たちがみんな集まっているのかもしれないなあ、って数がここに集結していた。
その姿に、
「どうも、戦うって感じでもないな」
っていつの間にか僕の横にいて、その様子を見てる白馬さんが言うんだ。
白馬さんの話だと、疲れ切ったディアボロスくんは、三爪さんが、自衛隊の傷病者用のテントに連れてったんだって。
お疲れ様、って後で言わないと、ディアボロスくんの奇跡がなかったら、一体どうなっていたことかって、本当に思う。
もちろん、それを言うなら、その利用方法を考えた上で、こっちにサクッと送って来た黒神様にもだね。
そして僕は、
「ねえ、そろそろいいでしょ?」
って僕の腰のあたりにしがみついて離れない静流と蒼さんに言うと、
「もう、変な事するのは無しだからね、ちゃんと計画と作戦を伝えてから動いて」
って、未だ涙目の静流に言われる。
いやいやいや、先に飛び込んで行ったの君だよ、静流に蒼さん、って言おうと思うけど、でもまあ、それはいいか、僕と春夏さんの為の行動だったからね。
そして、僕の顔をじっと見る静流は、
「春夏とはきちんと話し合うから、大丈夫だから安心してね」
って言い出す。
その話し合いって何が話し合われるんだろ? って思いつつ、今はいいやってスルーする。きっとその話し合いは、僕のことであるにもかかわらず、僕が口を出せない奴になりそうだから、本気で困ったら、僕が春夏さんに相談するよ。
って言ってる側から、春夏さんがこっちに向かって帰って来る。きっと、お父さん、車で春夏さんの衣服を届けてくれたんだなあ、って、いい家族だなあ、ってそう思ったよ。
「秋くん」
って言うから僕も嬉しくなって、
「春夏さん!」
って大きな声出して言ってしまう。
ここでようやく、僕の腰から離れる静流と蒼さん。
春夏さんは僕の隣に来て、ニコニコしている。
で、ここに集結しつつある、北海道中に散っていた異世界のガチ勢とかに取り囲まれながら、僕は、
「一体、何が始まるの?」
って春夏さんに聞いて見ると、
春夏さんは微笑みながら、
「ご挨拶よ、秋くん」
って教えてくれる。
そっか、挨拶かあ……。
こうして見ると、本当に壮観だね、僕を取り囲むガチ勢のさ、異世界の魔物の人たちって、ほんとうに伝承や伝説のモンスターそのものなんだよね。
ドラゴンどころか、火の鳥は空飛んでるし、グリフォンとか、和風の龍もいるし、絵本から出て来た様な悪魔や巨人までいる。
「控えよ! 戦勝王の御前である!」
うわ! びっくりした!
って急に僕の横というか前に出る人がいて、その大きな声にこっちまでビビってしまい、「ヒィ!」って声を出してしまったよ。
見ると、僕の横には桃井くんがいて、いつもより立派なローブで、手をいっぱいに広げて、ここに集まる巨大な魔物な人達にいうんだよ。
「貴様達は、かの王とその兵に負けたのだ、そしてその御心に降る意志があるのなら世界を壊し、破壊の王、この世の理すら撃ち狂わす、狂王への謁見を許そう、大仰にひれ伏すがいい」
って今度は僕を挟んで、角田さんが大声で叫ぶ。
うわ、こっちもいつもよりいいローブみたいな? そんな礼服な感じな衣服を身に纏っている。しかも顔もいつもより利発そうに見えるよ。
なんて事に感動というか感心していたら、僕の目の前で、山が低くなった。
っていうか、急にさ、巨人的な人は片膝をついて、獣的な魔物の人は、ドラゴンも含めてだけど、飼い犬で言う所の伏せ、って感じで首を垂れる。